日本の住宅の多くは木造住宅です。
その中でも、「木造軸組工法」は、日本の家づくりにおいて古くから取り入れられてきた工法です。
ここでは、日本の伝統工法でもある木造軸組構法の魅力について解説していきます。
メリット・デメリットについてや、似た名称の木造枠組工法との違いについても紹介しますので、早速見ていきましょう。
目次
木造軸組工法の魅力
木造軸組工法とは、日本で古くから使われてきた工法で、在来工法とも呼ばれています。
コンクリートの基礎に柱を立てて梁を組み合わせてフレーム状の骨組みを作ります。
柱と梁で建物を支えるのが木造軸組工法の魅力です。
ここからさらに建物を強くするために、柱と柱に斜めにかけて補強する筋交いと呼ばれる耐力壁を入れて建物を強化します。
木造軸組工法の魅力は、なんといっても自然素材である木を使うことです。
木材は、湿度の調整や断熱吸収などに優れた特性があり、人の健康面にも良い影響を与えます。
また、木材の家はダニの繁殖抑制効果がありアレルギー皮膚炎の予防も期待できます。
他にも、木の香りは心にやすらぎを与え、殺菌・殺虫・悪臭除去効果もあるなど、木の家ならではの良い点がたくさんあります。
木造軸組工法のメリット
木造軸組工法には、以下のようなメリットが存在します。
・間取りの自由度が高くて理想の家を建てやすい
・将来増改築がしやすいので人生計画も立てやすい
・多くの工務店で対応できるので選択肢が広い
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
間取りの自由度が高くて理想の家を建てやすい
木造軸組工法の最も大きなメリットは、間取りの自由度の高さです。
柱と梁で構成された骨組みは、柱の位置を変えることで空間の形や大きさを自由に変えることができます。
柱や間仕切りを少なくして開放的なワンフロアの大空間を作り出すことも可能です。
他にも、壁一面を窓にしたり、大きな吹き抜けを作るなどの大開口も作りやすいです。
このように、間取りの自由度が非常に高いので、理想のマイホームを実現しやすくなります。
将来増改築がしやすいので人生計画も立てやすい
木造軸組工法は柱と梁で構成されているため、将来増改築をする時に工事をしやすいというメリットもあります。
例えば、新築時にはワンフロアの広い部屋にし、将来子供が大きくなった時には間仕切り壁を設置して2部屋にリフォームもしやすいです。
反対に2部屋をワンフロアに変えることもできます。
木造軸組工法は、将来のライフプランも考えた上での間取りの検討が可能です。
多くの工務店で対応できるので選択肢が広い
木造軸組工法は、日本で最も多く用いられる工法です。
そのため、多くの工務店で対応が可能です。
家を建てる際にどの工務店で建てるか、選択肢の幅が広がるので自分にピッタリの業者を選ぶことができるのも木造軸組工法のメリットと言えるでしょう。
木造軸組工法のデメリット
続いて木造軸組工法のデメリットについて見ていきましょう。
・工期が長くなりやすいく費用が高くなりやすい
・業者や職人の腕で品質の差が出る
それぞれのデメリットについて解説していきます。
工期が長くなりやすく費用が高くなりやすい
木造軸組工法は、間取りの自由度が高い分、現場での職人の作業が多くなり工期が長くなりやすいというデメリットがあります。
工期が長くなるということは、その分の人件費も発生します。
そのため、他の工法よりも建築費用が高くなりやすいです。
業者や職人の腕で品質の差が出る
間取りの自由度の高さは、職人の手作業を増やすことにも繋がるのです。
そのため、現場の職人や業者の腕で品質の差も出る場合があります。
木材等の部材の組み合わせも自由に決められるので、使用する部材によって施工品質にも差が出ることもあります。
家づくりの際の工務店選びをする際は、木造軸組工法の施工実績があるかどうかや、どのような部材を使用して家を建てているのかをホームページなどを見て確認するようにしましょう。
木造軸組工法と木造枠組工法の違いは何?
木造軸組工法と似た言葉で「木造枠組工法」という工法があります。
木造枠組工法は「ツーバイフォー工法」とも呼ばれており、こちらの方が聞いたことがある方が多いかもしれませんね。
木造軸組工法が柱と梁を使って「点を結ぶ」ようにして家を建てるのに対し、木造枠組工法はパネルを壁や床、天井に貼って「面を作って」家を建てる工法です。
木造軸組工法と木造枠組工法にはどのような違いがあるのか、以下の5つの分野でそれぞれを比較して見ていきましょう。
・間取りの自由さ
・開口部の取りやすさ
・リフォームのしやすさ
・地震への強さ
・防火性能の強さ
それぞれ比較してどんな違いがあるのか、解説していきます。
間取りの自由さ
柱と梁で骨組みを作る木造軸組工法の方が、パネルで箱を作る木造枠組工法よりも間取りの自由度は高いです。
木造軸組工法は、空間の形や大きさを自由に決められるというメリットがあるように、様々な家の工法の中でも間取りの自由さは高く、自由な空間作りが可能です。
例えば、階段下に収納を作ったり、狭い敷地や変形地でも敷地の形状に合わせた家づくりができます。
開口部の取りやすさ
間取りの自由度の高い木造軸組工法の方が、開口部も取りやすいです。
木造枠組工法では、面を作って家づくりをするため大きな開口部を作りにくくなります。
木造軸組工法なら大きな窓や、柱や壁のないワンフロアの実現も可能です。
リフォームのしやすさ
柱と梁で骨組みを作る木造軸組工法の方が、リフォームもしやすくなります。
建てた後も、間仕切りを作ったり壁を取っ払ったりなども可能です。
子供達が独立した後、夫婦2人暮らしの生活に合う家に改築したり、子供夫婦とともに二世帯で暮らせるように増築するなども対応しやすい工法です。
木造枠組工法は、壁で建物を支える工法のため、取っ払えない壁が多く出てきます。
そのため、あとから空間を広げることが難しいです。
また、木造軸組工法は対応できる工務店が多いので、もし将来新築時とは違う会社にリフォームをお願いしても対応しやすいです。
しかし、木造枠組工法は、メーカー独自の工法である場合もあって、新築時と違う会社にリフォームをお願いするのが難しくなるというデメリットもあります。
地震への強さ
まず、どちらの工法でも現在の耐震基準は当然クリアしています。
ただ、木造軸組工法と木造枠組工法を比較すると、木造枠組工法の方が地震には強い工法です。
なぜなら、木造枠組工法はパネルを組み合わせて支えるモノコック構造だからです。
このモノコック構造は、飛行機や新幹線などにも採用されるほど強固な構造と言われています。
強固な構造が特徴の木造枠組工法の方が地震の際に安心できるでしょう。
ただ、木造軸組工法でも耐震性を強めることは可能です。
例えば、リビングに大きな窓を設置するなら、窓の周辺に耐力壁を設けたり、吹き抜け部分に梁と梁を繋ぐ火打ちを入れるなどして家の耐震性を高めます。
設計士にきちんと構造計算をしてもらって、バランスの良い家を設計してもらうようにしましょう。
防火性能の強さ
柱と梁で骨組みを作る木造軸組工法と比較すると、木造枠組工法の方が面で炎を跳ね返せるため防火性能が高いです。
ただ、高い耐火性が求められる防火地域や準防火地域でも木造軸組工法の家は建てられています。
つまり、外壁材などに防火性能の高い素材を選ぶことで、木造軸組工法でも十分に高い防火性能が期待できます。
軸組工法と枠組工法の良いとこ取りした木造軸組パネル工法とは?
木造軸組パネル工法とは、木造軸組工法と木造枠組工法を組み合わせた建築工法のことです。
木造軸組工法の特徴である柱と梁を使った縦横の骨組みと、面材を貼って施工する木造枠組工法の特徴を組み合わせて家を建てます。
つまり、軸組工法と枠組工法の良いところどりをした工法といえます。
木造軸組パネル工法のメリット
木造軸組パネル工法には、4つのメリットがあります。
・耐震性が高くなる
・気密断熱性能が高くなる
・間取りの自由度が高くなる
それぞれのメリットを簡単に説明していきます。
耐震性が高くなる
木造軸組パネル工法は、耐力壁に筋交いを利用せずに建物の外周部にパネルを貼ります。
これにより、建物を面で支えることになるため高い耐震性が実現できます。
パネルによってはより耐震性の強いものも選ぶことも可能です。
地震が多い日本では耐震性の高さがとても重要視されているので、耐震性の高い家にしたい方には木造軸組パネル工法をおすすめします。
気密断熱性能が高くなる
木造軸組構法は、風通しが良いため湿気に強いという特徴がありますが、断熱性や気密性には優れていません。
これは、柱と梁で構成されており隙間が発生してしまうためです。
対して木造軸組パネル工法はパネルを貼ることで、外の空気が真ん中する隙間をできるだけ少なくすることで、気密断熱性を高くすることができます。
気密断熱性が高いということは、省エネ性能が高くなることにも繋がります。
外気を家の中に侵入させず、室内の空気を外に逃がさないということで冷暖房効率をあげることも可能です。
つまり、光熱費の節約にも繋がってくるのです。
また、省エネ性能が高いと、ZEH住宅に認定される場合もあります。
ZEH住宅に認定されると、住宅ローン減税の控除や住宅ローン金利の引き下げられたりと、嬉しいメリットが得られます。
間取りの自由度が高くなる
木造軸組パネル工法は、間取りの自由度が非常に高いです。
これは、木造軸組構工法が基本となった工法のため、木造軸組工法のメリットである間取りの自由度の高さが木造枠組パネル工法でも実現できるからです。
将来増改築時にも柔軟に対応できます。
木造軸組パネル工法のデメリット
木造軸組パネル工法のデメリットです。
・工期が長くなりやすい
・品質に差が出る
それぞれ見ていきましょう。
工期が長くなりやすい
木造軸組パネル工法は、作業量が多く間取りの自由度が高いため、工期が長くなりやすいです。
現場での作業量も多く、職人の腕や天候によっては作業ができずに工期が延びてしまうケースもあります。
工期が長くなると人件費も高くなるため、初期費用が高くなりやすい工法でもあります。
品質に差が出る
職人の腕によって品質の差が出やすいです。
これは、木造軸組パネル工法が、木造軸組工法よりも施工できる会社がまだ多くないことも理由の1つと言えるでしょう。
木造軸組工法でもお伝えしましたが、木造軸組パネル工法で家を建てると決めたなら、木造軸組パネル工法の実績がある施工会社を選ぶようにしましょう。
まとめ
木造軸組工法の魅力やメリット・デメリット、木造枠組工法との違いや木造軸組パネル工法について解説しました。
住宅には様々な工法があり、それぞれに特徴があります。
どんな家を建てたいかによって、選ぶ工法も決まってくるでしょう。
これまで解説したことを参考に、どの工法で家を建てるかを検討してみてくださいね。