住宅の印象を大きく左右するのが床です。
床は、住宅の中でも目に付く部分であり、室内空間への印象を大きく変化させる要因となります。
住宅内で素足で過ごすことが多い日本人にとって、床は色だけではなく機能性や触った時の感覚も重要です。
本記事では、場所によって適している床や床材の種類と特徴、床の色の決め方などについて紹介します。
ぜひ、床選びの参考にしていただければと思います。
目次
場所によって適した床が違う
「住宅の床」といっても、場所や機能によって適した床は異なります。
ここでは、場所ごとに適した床について解説します。
リビング
リビングは家族が集まってくつろぐ場であり、テーブルやソファといった重い家具を置くことが多い部屋です。
そのため、へこみに強い床材が適しています。
耐久性を重視するなら、硬めのフローリングがおすすめです。
塩化ビニル樹脂製のクッションフロアは、遮音性や衝撃吸収性に優れているため、人の出入りが多いリビングに向いた床材です。
汚れをふき取りやすいという点でもおすすめです。
同じ塩化ビニル樹脂製のフロアタイルも耐久性の高さや汚れのふき取りやすさという点でおすすめできます。
ほこりを抑制する効果を重視するのであれば、カーペットも選択肢の一つです。
ほこりが舞い上がりにくく、空気中のハウスダストの量を減らせます。
ただし、カーペットはほこりを中に貯めこみがちであるため、念入りに掃除機をかける必要があります。
玄関
玄関は靴を履き替える場所であるため、耐久性が高くメンテナンスがしやすいタイルが向いています。
素材が硬いため傷つきにくく、変色・変質しにくいというメリットがあります。
水を吸い込みにくい素材であるため、水洗いやデッキブラシで洗浄できるのも長所です。
フロアタイルも玄関向きの床材です。
タイルに比べると加工しやすく、カッターナイフやはさみでカットできるため、DIYでよく使用されます。
材料費がタイルよりも安いため、使用しやすいのもメリットです。
子ども部屋
子ども部屋の床材を選ぶ際に気を付けるべきポイントが3つあります。
1つ目は汚れや傷に強いこと、2つ目は床が滑りにくいこと、3つ目は音が響きにくいことです。
これらの条件に合う床材はフローリングやカーペット、コルクタイルです。
フローリングの長所は傷がつきにくいことです。
特殊な表面加工を施したものであれば、おもちゃやものがぶつかっても傷がつきにくく、表面がはがれてしまうのを防いでくれます。
また、天然木100%の無垢フローリングを使用すると、手になじみやすく優しい手触りになるため、子ども向けの床材に適しています。
無垢フローリングは汚れがふき取りやすいというメリットもあります。
カーペットは、毛やナイロンなどの素材でできている床材で、衝撃吸収効果やほこりが舞い散るのを抑える効果が期待できるため、子ども部屋の床材に適しています。
ウールは保温性や防火性があり、ナイロンなどの合成繊維は防カビ・防虫性能に優れています。
コルクタイルは、コルク樫の木の皮を砕いて床材にしたものです。
コルクは、ワインの栓などにも用いられているため、知っている方も多いでしょう。
コルクタイルには高い保湿性と吸音性があります。
適度な弾力性もあるため、子どもたちが動き回ってもケガをしにくいという長所があります。
水に強く、濡れたとしてもすぐに乾くという点も、子ども部屋向きといえるでしょう。
また、コルクタイルは気泡を含む素材であるため、衝撃に強く、音や振動も吸収してくれるため、音が大きくなりがちな子ども部屋にうってつけの床材だといえるでしょう。
キッチン
キッチンの床は水滴や油で汚れやすいため、防水使用の床材が適しています。
汚れが付きやすいことを考えると、水拭きなどで汚れが落ちる床材が理想的です。
油汚れが発生しやすいことも考えると、滑りにくい床材もキッチン向きだといえるでしょう。
キッチンでよく使われるのは、フローリングやタイル、フロアタイル、クッション風呂などです。
フローリングはキッチン以外の場所でも良く用いられる代表的な床材で、リビングやダイニングと色合いを合わせやすいことから、キッチンでも活用されます。
キッチンで使用する場合、防水加工や防汚加工をしているフローリングを用いるのが理想的です。
水をはじくという点では、陶磁器を使った硬い素材であるタイルも適しています。熱や衝撃、薬剤に強いタイルは、水や油、洗剤などで汚れがちなキッチンに適した床材だといえるでしょう。
色や形のバリエーションも豊富であるため、キッチンの床をおしゃれにしたい人に向いています。
ただし、寒い時期に冷えやすいというデメリットもあるため、冬場はスリッパをはいた方がよいでしょう。
塩化ビニル系の床材であるフロアタイルもキッチン向きの床材です。
すでにある床の上から張ることができるため、リフォーム時に採用してもよいでしょう。
タイルよりは耐久力が低いため、経年劣化しやすいことを頭に入れておきましょう。
クッションフロアもキッチン向きの床材です。
素材はフロアタイルと同じ塩化ビニル系ですが、クッション性があるため食器などを落としても割れにくいという長所があります。
表面が軟らかいため、足にかかる負担が少なくて済むのも長所です。
さらに、耐水性があることから水や油に強く、汚れが中までしみ込みにくいため掃除がしやすいというメリットもあります。
タイルに比べて安価である点も活用しやすい点だといえるでしょう。
しかし、他の床材に比べると耐久面で不安があるため、傷んできたら交換しなければなりません。
洗面所・トイレ・浴室
洗面所・トイレ・浴室の3か所に共通しているのは、水まわりの場所であることです。
水回りに適しているのは、タイルやクッションフロア、コルクタイルです。
耐水性や耐久性に優れているタイルは、水回りで使用するのに向いている床材です。
メンテナンスがしやすいという点でも好まれますが、冬場に冷えることは覚えておかなければなりません。
クッションフロアは、耐水性が高い点や汚れが付きにくい点などが水回りに向いています。
近年は、デザイン性が高くカラーバリエーションも豊富というメリットも追加されました。
カビの発生を防いだり、細菌の増殖を抑えたりする機能もあるため、検討する価値があります。
コルクタイルも耐久性・断熱性が高いため、水まわりの床材として向いています。表面を加工することで、水や汚れに強くなっているタイプもあります。
弾力性があるため、足腰への負担が少ないのもメリットです。
フローリングを使用することもできますが、経年劣化で表面が傷んだり、塗装が剥げたりといったリスクがあるため、選ぶ際には防水加工が施されているものを選んだほうがよいでしょう。
床材の種類と特徴
部屋の特徴によって、向いている床材があることがわかりました。
ここからは、床材の種類や特徴をもう少し詳しく見てみましょう。
木材(フローリング)
木材は最も使用頻度が高い床材で、フローリングとよばれます。
フローリングは大きく分けて無垢フローリングと複合フローリングの2種類に分けられます。
それぞれの特徴を見てみましょう。
無垢フローリング
無垢フローリングに用いられる無垢材は、自然な状態の木材のことです。
一般的によく使用されるのは、薄くした木材を接着剤で張り合わせた人工的な木材です。
無垢材は、丸太から切り出したままの木材で、近年人気が高まっています。
主な無垢材は以下の5つです。
・パイン(松)
・スギ
・ヒノキ
・クリ(チェスナット)
・オーク
パイン材は、北米などで伐採された松のことです。
経年変化で独特の風合いが出ることから人気がある床材です。
スギは古くから日本で用いられてきた木材で、肌触りが良いという特徴があります。
ヒノキは日本を代表する高級木材で、芳香と強度、耐久性に優れています。
クリはハッキリとした木目が特徴的で、硬さや保湿性に優れています。
オークは船や樽の材料として用いられてきた木材で、耐久性と耐水性に優れます。
こうした無垢材を活用するメリットは、木材本来の風合いが色濃く残っていることや、軽劣化を楽しめること、調湿機能に優れ、夏場を快適に過ごせること、冬場でも冷えにくいことなどがあります。
その反面、膨張・収縮を起こしやすいことや、複合フローリングに比べて傷がつきやすいこと、表面を塗装しても水に弱いことなどがあります。
濡れたまま放置すると菌が増殖してしまう可能性があるので、こまめなメンテナンスが欠かせません。
複合フローリング
複合フローリングは、合板に薄い木の板や木目調のシートをはり付けた床材です。無垢材に比べて低コストで生産できるため、幅広く用いられています。
複合フローリングの特徴は、傷や汚れに強いことと湿度や温度の変化に強いことです。
メンテナンスがしやすく、場所を選ばずに使用できるのが複合フローリングの魅力といえます。
複合フローリングには、挽き板タイプ・突板タイプ・シートタイプの3種類が有ります。
最も高価なのは挽き板タイプで、無垢フローリングに近い質感を味わえます。
突板タイプは挽き板タイプよりも表面の木の厚みが薄くなりますが、その分、コストを抑えられます。
そのため、幅広い場面で使用されています。
シートタイプは木材の表面に樹脂フィルムや紙などのシートを張ったものです。
印刷された木目であるため、風合いにかけるというデメリットがあります。
フロアタイル
フロアタイルとは、塩化ビニルでできたタイル状の床材です。
使用されている素材から、「塩ビタイル」とよばれることもあります。
フロアタイルには以下のメリットがあります。
・リアルな質感
・デザインバリエーションが豊富
・丈夫で傷に強い
・手入れがしやすい
・コスパがよい
フロアタイルは凹凸を再現するエンボス加工が施されているため、本物に近い質感を再現しています。
陰影もしっかり表現されているため、見た目はかなり近いといえます。
デザインの種類が豊富であることもフロアタイルのメリットです。
多数のパターンの中から、自分の希望に合ったものを選べるでしょう。
耐久性や耐水性が高いのもフロアタイルのメリットです。
多少の衝撃や摩擦では傷がつかないため、安心して日常使いできます。
汚れをふき取りやすいため、水回りやキッチン、玄関など汚れが目につきやすい場所にも使用できます。
加えて、タイルに比べると低コストであるため、コストを抑えられます。
クッションフロア
クッションフロアも、塩化ビニル製の床材です。
床材の厚みは1.8〜3.5mmほどで、クッション性を備えています。
防水性が高く、こぼれてしまった液体汚れなどを簡単に拭き取れるメリットがあるため、キッチンや水回りに向いています。
クッションフロアの表面には木目調や石目調、タイルなどの柄が印刷されているため、使用する場の雰囲気にあわせてデザインを選べます。
他の床材と比べ低コストであることも活用しやすい理由です。
ただし、家具を置いた後にへこみができてしまう点や質感が他の床材よりも見劣りしてしまう点、熱に弱い点などに注意が必要です。
カーペット
カーペットを選ぶ利点は以下のとおりです。
・肌触りが軟らか
・カラーバリエーションが豊富
・ほこりの舞い上がりを防ぐ
・吸音効果がある
・保温性がある
カーペットは肌触りがなめらかであるため、素足で過ごす日本の生活にマッチしています。
衝撃を吸収してくれる効果もあるので、足にかかる負担を軽減してくれるのもよい点です。
加えて、硬い床材よりも衝撃を吸収してくれるため、安全性が高いといえます。
色の種類が豊富なのもカーペットならではの長所です。
さまざまな色から自分の好みに合ったものを選択できます。
さらに、カーペットはほこりが舞い上がるのを抑えるメリットも備えています。
それらに加え、歩行音や反響音を吸収する性質もあります。
また、保温性も高いため、冬場の寒さをしのぐのに適した床材です。
タイル
床材として使用されるタイルは、磁器質・せっ器質・陶器質などのタイルがあります。
磁器質タイルやせっ器質タイルは吸水性が低いため水回りでの使用に適しています。
陶器質タイルは細かい穴がたくさん開いている多孔質であるため、吸水性が高くなっています。
タイルを用いるメリットは、高い耐久性や耐水性、防汚性能です。
傷やへこみが生じにくく、水に対しても強いためキッチンや浴室などで用いられます。
汚れが付きにくく落としやすいため、相似がしやすいのもタイルのメリットです。
コルクタイル
コルクタイルは、コルク樫の樹皮を圧縮・加工して作られた床材です。
コルクタイルには高い衝撃吸収性・防水性・防音性・調湿性などがあります。
コルクタイルは内部に空気を多く含むため、衝撃や音を吸収する機能を持っています。
子どもがぶつかっても衝撃を吸収してくれるため、子ども部屋の床材に適しています。
水に強く吸湿性に優れているコルクタイルは、水回りや浴室にも適しています。
さらに、他の木材よりも腐りにくいため、ダニやシロアリといった住宅機能を低下させる害虫の発生を防ぐ効果が期待できます。
床の色の決め方
新築住宅を建てたり、既存の住宅の床をリフォームする際に悩むことの一つは、床の色をどうするかです。
今回は床の色を白系・黒系・中間色にわけ、それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
白系のメリット・デメリット
白系のメリットは、部屋全体を明るく見せてくれることです。比較的、他のインテリアと合わせやすいため、バランスを取りやすいという長所があります。
その一方、髪の毛などの黒っぽい汚れが目立ったり、色褪せが目立つといったデメリットもあります。
黒系のメリット・デメリット
黒系のメリットは、部屋全体をシックに見せ、高級感のある雰囲気にしてくれることです。
細かい傷が目立ちにくく、部屋をきれいに見せやすいのもよい点です。
その一方で、白いほこりが目立ちやすい点や、部屋が狭く見えがちな点、暗く感じやすい点などがデメリットです。
中間色のメリット・デメリット
白や黒に偏らない穏やかな色合いを中間色とします。
中間色は部屋全体を自然に見せてくれる効果があり、温かい雰囲気の部屋になります。
オーソドックスで、あまり好き嫌いが分かれないため使いやすい色だといえるでしょう。
デメリットは、部屋の特徴を出しにくいことです。
家具などでアクセントをつけることで特色を出しやすくなります。
まとめ
今回は住宅の床選びについて考えてみました。
床材は住宅の場所によって適しているものと向いていないものがあります。
TPOにあわせて適切な床材を選ぶと、後々後悔しないですむでしょう。
また、床材の素材によって得意不得意があります。
使いたい床材がどのような特徴を持っているか、事前にしっかり調べておくとハウスメーカーとの打ち合わせが上手くいきます。
床の色は好みで決めても差し支えありませんが、明るい雰囲気や開放感を求めるのであれば白系の床を、シックで落ち着いた雰囲気にしたいのであれば黒系がおすすめです。
特にこだわりがなければ、中間色にしておくのが無難です。