自分のこだわりを形にし、理想にもっとも近い住まいを建てられる注文住宅ですが、決まった形がないからこそトラブルが起きやすいとご存じでしょうか?
注文住宅によくあるトラブルとはどのような内容か、5つの建物・工事トラブルと3つの金銭的トラブルとともに、トラブルを未然に回避するポイントもご紹介します。
目次
注文住宅によくある建物・工事の5つのトラブル
注文住宅とは、外観や間取り、設備など住まいに関するあらゆる内容を自分が決め、それを形にした物件を指します。
完成像が人によって違うからこそ、トラブルになりやすいといわれていますが、その原因はほんのわずかなイメージのズレなどです。
よく起きてしまう注文住宅のトラブルとは何か、建物や工事に関するトラブルから5つをご紹介します。
物件の引渡しが遅延する
注文住宅によくあるトラブルの1つは、何かしらの理由によって工事に遅れが発生し、物件引渡しまで遅れてしまうトラブルです。
工事期間は契約段階で綿密に計画を立てていますが、天候不良が続いてしまったり、材料が届かないために工事が遅れてしまったり、さまざまな理由から遅延が発生します。
人為的ミスによる遅延もありますが、雨が続いて工事ができなかったなど、どうしようもない理由もあるため、すべてを回避するのは難しいです。
しっかりとスケジュール管理をしていても、回避が難しい理由による遅延では、どうにもできません。
物件引渡しが遅れると、仮住まいからの引越しなど、あらゆる予定に遅れが生じてしまうでしょう。
図面と異なる部分がある
注文住宅では、依頼主である施主の希望を形にするように建築を進めるため、図面どおりの住まいが完成します。
しかし、ごく稀に施主の合意を得ずに変更をおこない、施主に報告がないまま工事が進められるケースがあります。
造作棚の配置が違っていたり、使用する建材の色が違っていたりするケースがよくある例です。
間取りがまったく変わってしまうような大きな違いではありませんが、室内の雰囲気が変わるほどの違いを感じるでしょう。
故意に変更していた場合もあれば、不注意によって間違えてしまう場合もあるため、どうしてこうなってしまったのか確認が必要です。
思っていたイメージと異なる
図面と工事内容は一致しているけれど、完成した住まいは思っていたイメージと異なってしまうトラブルもあります。
注文住宅では何回も担当者と打ち合わせを重ね、理想の住まいになるように、材料1つ1つまで細かく決めますが、施主と担当者それぞれのイメージは一致しているでしょうか?
このトラブルは、施主と担当者がイメージする完成像のすれ違いが原因で起きるトラブルです。
ハウスメーカーや工務店の担当者は図面や材料サンプルを見れば、完成がどのような姿になるかイメージできるでしょう。
しかし、初めての注文住宅となる施主は、図面や材料サンプルなどを見ても、完成像を具体的にイメージするのは難しいです。
このようなすれ違いから、思っていたイメージと完成した物件が異なるトラブルが起きてしまいます。
着工してから近隣住民とトラブルが起きる
住宅建築工事では、普段は閑静な住宅街に重機やトラックの出入りが頻繁にあるため、近隣住民から苦情が寄せられるトラブルが発生しやすいです。
寄せられる苦情は、作業音がうるさい、工事の振動が響く、重機やトラックの出入りでホコリが立つなどがあります。
苦情を言いたくなる心理には、工事がいつまでおこなわれるか、何ヵ月先までおこなわれるか、どのような作業が始まるかわからない不安があるからです。
工事を始める前には、工事業者が近隣住民に挨拶をし、工事内容やいつまでおこなうかをお伝えしますが、そこで伝達すべき情報が欠けてしまうとトラブルのもとです。
引渡し後に施工不良が見つかる
施工不良トラブルも注文住宅ではよく起こっており、ひどい場合にはドアがきちんと閉められないなどの施工不良が見つかります。
よくある施工不良は、壁紙が浮いている、一部が剥がれかけている、色むらがある、床や壁に傷があるなどです。
どうしてこのような施工不良が起きてしまうのか、それは作業を雑におこなったり、経験の浅い作業員が担当したままチェックが漏れてしまったりなどするからです。
施工不良はお客様にお見せする前に手直しするのが通常ですが、チェック作業を怠る・手直し作業自体を怠るなどする業者も残念ながらいます。
施主がこれらの施工不良を目にする機会は、建物が完成してからとなるため、心理的なダメージが大きいトラブルです。
注文住宅によくある3つの金銭トラブル
建物や工事に関してのトラブルでは、思い違いやチェック不足などからトラブルが引き起こされていました。
注文住宅によくあるトラブルは建物・工事に関するものだけでなく、金銭に関するトラブルも起きています。
「支払いはローンを組んだから大丈夫」や「金額はしっかり確認して契約したから大丈夫」と気を抜いていると、思いがけないトラブルに遭遇してしまうかもしれません。
諸費用の支払い方法を失念していた
注文住宅では、現金で支払う必要がある諸費用の存在を失念してしまうトラブルがよくあります。
費用のほとんどは、銀行から融資される住宅ローンで支払いがおこなわれますが、すべてではありません。
おもに現金で支払いが必要となる費用は、売買契約書の印紙代や仲介手数料、工事の着手金や固定資産税などです。
これらの費用は売買契約や着工前など、都度支払いタイミングがあるため、自由に動かせる現金を持っていないと払えません。
土地購入費用、工事費用などすべてを合計した金額のうち、20〜30%ほどの現金を用意しておく必要があります。
値引きによってグレードが下がる
住宅はとても高額な買い物となるため、少しでも金額を抑えられないかとの交渉はよくある光景です。
値引き交渉をしていけないわけではありませんが、大幅な値引き希望は建材や設備のグレードを大きく引き下げ、住まいの質を落としてしまうかもしれません。
質のよい建材や最新設備だからこそ高い金額が付けられているため、建材や設備はそのままでの値引きは不可能です。
値引きによって支払額が下がっても、これから何年も住み続ける住まいの質を落としてしまっては、快適な暮らしから遠ざかる結果となってしまうでしょう。
場合によっては、値引きを実現させるために作業人員を減らすなど、工事が長引く原因を作りかねません。
施工中に追加工事を求められる
図面と同じように建てるだけならば、追加工事は必要ないように思えますが、現地の状況によっては変更を余儀なくされるケースが起きます。
例えば、予想したよりも土地に高低差があって土を盛らなければ平らにできない、土地の水はけが悪くて地盤改良が必要になるなどです。
現地調査をおこなっても、実際に工事を開始してから発覚するケースもあるため、予定どおりにはいかない場合もあります。
また、施主側から間取りやコンセントの配置変更希望が出されると、変更部分に合わせて構造バランスを計算し直さなくてはなりません。
小さな変更点でも、それによる影響範囲が広い場合には、相応の追加費用がかかってしまいます。
よくあるトラブルを回避するポイント
注文住宅では理想の住まいが建てられますが、思い描いた理想を現実にするには、細かな点にも気を配る慎重さが大切です。
よくあるトラブルの多くは、些細な相違点の見過ごしによって引き起こされているため、トラブル回避のポイントはそこにあります。
具体的にどのような部分に注意を向けたらよいか、トラブルを回避するためのポイント8つをご紹介します。
理想の住まいのイメージを明確に持つ
注文住宅では、施主が思い描く住まいのイメージを、どれだけ具体的に担当者に伝えられるかがポイントです。
頭で思い描くのは簡単ですが、それを言葉や絵にして人に伝えるのは想像する以上に難しいと知っていますか?
例えば、壁を注文する際には「白い壁がよい」と伝えるだけでは、色にも素材にも種類が多すぎて、正確には伝わりません。
そこで、まずは自分の思い描く理想の住まいがどのような形・色・素材を使えば完成するか、明確にしましょう。
使用したい設備の製品番号や同じ建材を使った住宅の写真があると、担当者により伝えやすくなります。
理想とは反対のなりたくないイメージも伝えると、思い違いによるトラブルを回避できるでしょう。
担当者に正しく伝わったか確認する
思っていたイメージと完成した物件が異なるトラブルは、担当者とのイメージの共有がうまくいかなかったのが原因です。
このトラブルを回避するには、打ち合わせで設備や素材などを決めるたびに、決定した内容を徹底的に確認します。
未定事項でも、次回のために調べておいてほしい内容があれば、担当者にどのようなイメージで伝わっているか確認をしましょう。
何回も聞くのは悪いと感じる方もいらっしゃいますが、伝達事項を確認せずにあとからトラブルが起きるほうが問題です。
引渡し前の立ち会いで見過ごさない
工事が完了すると、施主立ち会いで物件の最終的なチェックとなる内覧がおこなわれますが、ここがチェックできる最後のポイントです。
物件引渡し前の内覧は、完成した建物がこれでよいと判断する場のため、物件引き渡し後に施工不良を指摘しても、直してもらえない可能性があります。
ここではトラブル回避のために、重箱の隅をつつくような細かさでチェックに挑み、小さな傷も見逃さないのがポイントです。
その場で指摘できる内容は指摘し、疑問があれば写真に撮って証拠を残しておくと、トラブルが起きても対処しやすくなります。
記録を残しておく
設計図面や注文書を見ても、何が書いてあるか意味がわからない書類が注文住宅ではたくさん登場しますが、それらの記録を1つずつ残しておくと、トラブル回避につながります。
一般的に、担当者との打ち合わせは数回にわたっておこなわれますが、打ち合わせのたびに内容は変わるでしょう。
その変更1つ1つを記憶しておくのは難しいため、いつでも見返せるように写真やメモにして情報を整理するのがポイントです。
写真ならば手間もかからず、正確に情報を記録でき、メモを添えれば、どのような流れでそうなったかもわかります。
追加工事は見積りをもらってから考える
施工中に追加工事を求められるトラブルが発生する原因は、予定した状況と現状との食い違いや契約後の変更希望です。
このトラブルでは、見積りが正確ではなかった点が一因にありますが、追加工事するしか方法がないとは限りません。
別に選べる方法があれば、誰でも落ち着いて状況を整理してから、それぞれのメリットとデメリットを比べて判断するでしょう。
工事が進まなくなってしまう不安から、どのような工事内容か、いくら追加で費用が発生するか確認しないまま承諾してしまうと、それこそトラブルです。
特に金額確認は、概算の見積書だけで判断するのではなく、正確な追加費用がいくらになるかわかってから工事をするかしないか決めましょう。
着工前の近隣住民への挨拶は施主も同行する
近隣住民とのトラブルを回避するポイントは、工事業者がおこなう事前の挨拶に施主も同行し、ひと言でも挨拶しておくことです。
このトラブルの原因は、知らない誰か・何かによって、自分のこれまでの生活が脅かされてしまうかもしれないと不安になる心理が働いています。
知らないことが近隣住民の不安を突き動かしてしまうため、工事業者だけでなく、施主が一緒に挨拶すると、その不安を軽減できるでしょう。
相手が誠意を持って接してくれるとわかれば、人は寛容になり、あえて苦情を言おうとはしなくなります。
都度支払い額を正確に把握する
何回も打ち合わせが繰り返される注文住宅では、打ち合わせ後半になるほど総支払額が曖昧になるでしょう。
理想を追い求めすぎると費用はどんどん高額になり、せっかく決めた内容をもう一度見直さなくてはなりません。
ここで注意しておきたいポイントは、住宅建築費用にいくらかかっているか、追加した金額や値引きした金額だけでなく、総支払額の確認です。
見積書は建材や設備ごとに分けられているため、それぞれの支払額がわかっても、総支払額は計算しなければわかりません。
自分で計算して間違いがないか確認は大切ですが、担当者ともその情報を共有して、正しい情報が共有できているか確認しましょう。
現金一括の支払いは避ける
不安定な社会情勢が続く現代では、住宅建築を依頼した施工会社が倒産してしまうトラブルがあります。
このトラブルは事前に察知するのが難しいため、ニュースで騒ぎが起きてから初めて知るケースは少なくないでしょう。
万が一、施工会社が倒産してしまった場合、現金一括で支払っていれば、そのお金は取り戻せない可能性が高いです。
建築費用は一般的に、工事前・中間・工事完了後など複数回に分けて支払いがおこなわれるため、一括払いを求められるケースはほとんどありません。
施工会社から現金一括での支払いを求められた場合には、一括払いを避け、どうして現金一括払いでないといけないのか、理由を確認しましょう。
トラブルが起きてしまったら?3つのチェック!
注文住宅によくあるトラブルを知って、回避するための対策をしていても、運悪くトラブルに遭遇してしまうケースもあります。
もしトラブルが起きてしまったらどのように対応すればよいか、自分で解決が難しい場合にはどこを頼ればよいか、知っておきましょう。
ここでは、注文住宅でトラブルが起きた際、知っているとすぐに対応できるチェックポイントと相談先をご紹介します。
明確な不具合は瑕疵担保責任保険を確認
はっきりと住宅に不具合があるとわかる場合は、建築業者が加入している瑕疵担保責任保険を適用してもらいましょう。
瑕疵担保責任保険とは、新築住宅の物件引渡し後に、建物の構造主要部分に関わる瑕疵や雨漏りなどに対して、10年間の保証をする保険です。
この保険は国によって建築業者は加入するよう義務付けられているため、対象となる瑕疵があれば保険が適用されます。
万が一、施工会社が倒産していても、施主が直接保険法人に連絡して、保険金を請求できるので安心です。
第三者検査機関へ相談
施工不良のように見えるが、自分では正確な判断ができない場合、第三者検査機関に依頼し、プロの検査員にチェックしてもらいましょう。
国土交通大臣が指定する指定確認検査機関や登録性能評価機関に検査を依頼すれば、図面どおりに建てられているかわかります。
検査内容はさまざまで、物件引渡し前の内覧でおこなう検査や施工中の検査など、状況に応じた検査を依頼可能です。
住宅支援機構のフラット35で融資を受けている場合には、住宅支援機構による検査を2回受ける義務があるため、その検査でチェックができるでしょう。
参照:指定確認検査機関
参照:登録性能評価機関
相談内容の分類が難しい場合の相談先
注文住宅に関するトラブルではあるが、相談内容が複雑でどこに相談してよいかわからない場合は、総合的なトラブル解決窓口に連絡しましょう。
住まいるダイヤル(住宅紛争処理支援センター)は、国土交通大臣が指定する相談窓口で、一級建築士の資格を有した相談員に相談できます。
住宅トラブルの紛争解決も受け付けており、弁護士と建築技術を有する専門家が協力して、公正中立の立場から解決を図る機関です。
その他にも、あらゆる生活相談窓口の国民生活センターや、法律に関わる相談窓口の法テラスもあります。
参照:国民生活センター
参照:法テラス
まとめ
注文住宅ではトラブルがよく起きてしまうものですが、回避しようとポイントを押さえていれば、回避可能なトラブルは多いです。
事前のトラブル回避はもちろん、困ったときは1人で対応しようとせず、専門家や相談窓口を頼りましょう。
焦らずに現状を正しく把握し、1つ1つを正確に積み上げていくのが、理想の住まいを作る基盤となります。