縁側のある住宅のメリットとデメリット

縁側はかつての日本住宅において一般的なものでした。

時代劇では縁側のシーンがたびたび登場しますし、文学作品にもしばしば登場するほど生活なじんだものでした。

 

住宅の洋風化が進むことで縁側は一般住宅であまり見られなくなりましたが、現代の住宅でも縁側を設置することができます。

 

本記事では縁側のある住宅のメリット・デメリットと題して、縁側とはどのようなものか、縁側のメリット・デメリット、縁側を作るときのポイントなどについて解説します。

ぜひ、縁側を作る際の参考にしてください。

 

縁側とは

縁側とは部屋と屋外との間にある板張りの空間のことで、古い時代の日本家屋では定番の設備でした。

屋内と屋外の間にあるため、両者をつなぐ役割も果たしていました。

日本家屋を舞台にした映画やドラマで、縁側に座って果物を食べたり近所の人と談笑したりする風景が描かれています。

住居内に入ることなく外靴のままでコミュニケーションをとる風景は日本の夏の風物詩として親しまれてきました。

一般的な縁側の奥行サイズは90cm(約3尺)で、長くても120cm程度です。

縁側の高さは部屋と同じ高さにするのが一般的ですが、部屋の床から少し(10~15cm)下げた「落縁」にすることもあります。

縁側の種類

縁側の種類は大きく分けて2種類、細分化すれば4種類です。

種類 特徴
くれ縁(内縁) 家の内部にあり、雨戸やガラス戸といった建具の内側にある縁側

雨が降っていても利用可能

広縁 くれ縁より広い縁側のこと

90cmが一般的な現代では120cmは広縁とされることが多い

濡れ縁(外縁) 床板が外に出ている縁側のこと

雨の日には縁側が濡れてしまう

落ち縁(落縁) 床板が部屋の床より低くなっている濡れ縁のこと

くれ縁はコミュニケーションの場やリラックスする場として活用されます。

部屋の延長線上にある空間といってもよいでしょう。

広縁はくれ縁よりも縁側の面積が広いため様々な用途で使用できます。

濡れ縁は部屋というよりも庭の延長線上に近い位置づけとなります。

雨の日には使えませんが、荒れている日であれば読書スペースやお茶を飲む場としても使えます。

落ち縁の使い方は濡れ縁とほぼ同じですが、庭との距離をさらに近く感じられるでしょう。

 

縁側の役割

縁側は古い時代から日本家屋の一部として用いられてきました。

もともとの由来をたどると平安時代の貴族の邸宅である寝殿造りにたどり着きます。

寝殿造りの建物には建物の周辺に巡らせた「ひさし(廂)の間がありましたが、これが縁側倒して発達したと考えられています。

もともとは通路だった縁側は、私大委に家の内外をつなぐ役割やコミュニケーションの場としての役割を担うようになります。

それに加えて住宅に住む人の憩いの場ともなりってきました。

現代の住宅に縁側を復活させる意味としては、住んでいる人のリラクゼーションの場としての活用が重要になるかもしれません。

 

ウッドデッキとの違い

縁側にかわって普及してきたのがウッドデッキでした。

縁側もウッドデッキも住宅の外側に張り出しているという点では同じです。

しかし、両者には大きな違いがあります。

縁側は屋根から張り出していたとしても、あくまでも家屋の一部という位置づけです。

ガラス窓などの建具で外界と仕切られているくれ縁や広縁は部屋の一部といってもよいくらいです。

外に張り出している濡れ縁や落ち縁にしても、家屋の一部であるという点に変わりありません。

しかし、ウッドデッキは基本的に家屋から大きく張り出して独立した設備です。

屋根がつながっていることもありますが、基本的には庭の一部といってもよい作りになっています。

住宅の一部である縁側に比べると風雨にさらされやすく、劣化することが多いといえます。

縁側の設置コスト

縁側の設置にはどのくらいのコストがかかるのでしょうか。

屋根の外に張り出す濡れ縁の場合、床部分の設置だけで済むため比較的安価に設置可能です。

1㎡あたりの相場は12,000円から20,000円程度であるため、1畳(約1.824㎡)であれば約22,000~36,500円必要です。

6畳の濡れ縁であれば132,000~219,000円という計算になります。

くれ縁の場合、家屋内に増設することになるため濡れ縁よりもコストがかかります。

1㎡あたりの相場は90,000~100,000円となるため、1畳なら約165,000~183,000円必要となります。

6畳なら1,000,000~1,100,000円ほどかかりますが、家屋の状況によってはもっと必要になるかもしれません。

 

縁側のメリット

住宅に縁側を設置するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

縁側のメリットを7つ取り上げて紹介します。

夏の強い日差しを遮れる

縁側のメリットの一つに夏の強い日差しが直接部屋に入るのを防ぐことがあります。

現代は部屋を閉め切ってエアコンで室内温度を調整することが多いですが、縁側が広く用いられていたころは、日差しを遮りつつ外の空気を取り入れる場として縁側が活用されていました。

くれ縁は部屋から窓までの距離が長くなるため日差しが差し込みにくくなり、濡れ縁はひさしの影が長くなります。ただし、縁側が東側や西側にある場合は日差しを遮る効果が期待できませんので、日差しを遮る効果を期待するなら建物の南側に縁側を作るとよいでしょう。

 

住宅の通気性がよくなる

通気性がよくなるのも縁側のメリットです。縁側がある住宅では縁側に面した掃き出し窓を大きく開放して空気を取り入れます。開口部が大きくなるため、室内の空気を一気に循環させることができ、湿気をたまりにくくしてくれるでしょう。

建物の高さが低い平屋では、住宅の周囲を建物で囲まれてしまうと風通しが悪くなりがちです。

リビングにつながる部分を縁側として掃き出し窓を設置すると、周囲を建物で囲まれた平屋であっても必要に応じて空気を入れ替えやすくなります。

 

室内温度を一定に保つことができる

縁側には室内温度を一定に保つ働きがあります。

縁側は先ほども述べたように、夏場は強い日差しを遮りつつ建物内の通気性を良くしてくれるため、室内の温度や湿度の上昇を抑えてくれます。

また、冬場は日差しが置くまで差し込むため室内を暖める効果があります。

サンルームの代わりとして活用できる

縁側はサンルームやインナーテラスのような役割を果たしてくれる場所でもあります。

サンルームとは、天井や壁などから外の光を取り入れられるようにした空間のことで、ガラス張りになっていることが一般的です。

サンルームは太陽光がふんだんに入ることから、物干しのスペースやセカンドリビング、子どもの遊び場として活用する人もいます。

インナーテラスとは家の中や外に張り出したテラスのことです。

四方を壁や窓で覆っていないため、より縁側に近い設備といえます。

雨天時の洗濯物の置き場としても利用できますし、子どもたちの遊びの場や家族のリラックススペースとしての活用も期待できます。

縁側よりも広いため、リラックスするためのちょっとした家具を置くこともできます。

また、洋風のデザインであるため縁側を作りにくいタイプの家でも導入可能です。

ただし、サンルームにしてもインナーテラスにしても、家と庭の中間というよりは家の一部といった側面が強く、縁側よりも庭との一体感が感じにくいというデメリットがあります。

縁側はサンルームやインナーテラスと同じような使い方をしつつ、庭との一体感を維持できる設備です。

雨が入りにくい構造になっているくれ縁の場合、雨天時の物干しスペースとして活用できます。

セカンドリビングにするには狭すぎますが、子どもの遊び場やリラックスの場として活用可能です。

部屋の床よりも少し下がっている落ち縁であれば、かなり庭に近い場所となりますので庭との一体感が維持しやすいでしょう。

 

コミュニケーションの場として活用できる

縁側はコミュニケーションの場というイメージが強いかもしれません。

古き良き日本の原風景ともいえる縁側は文学作品や映画でたびたび描かれてきました。

スタジオジブリのアニメ「となりのトトロ」で登場人物のサツキとメイが住む家をはじめ、登場する多くの住宅で縁側が描かれています。

作品内で登場する人物が縁側で会話をするシーンは、見る人をノスタルジーに浸らせてくれます。

このように、かつての日本住宅では縁側が家族や隣人とのコミュニケーションの場として機能していたのです。

玄関から家屋の中に入らなくても家の人とコミュニケーションが取れる縁側は、人と人の垣根を低くする役割を果たしていたでしょう。

現代であれば庭でバーベキューなどのホームパーティをするときに役立ちます。

縁側はイスとしての役割も果たしますので、わざわざイスを並べなくてもよいというメリットもあるでしょう。

 

庭の景色や借景を楽しめる

縁側には庭の景色や借景を楽しめるという効果があります。

通常、庭に出るためには玄関で靴に履き替えなければなりませんが、縁側があれば玄関を経由しなくても窓からすぐに庭に行けるため、庭の手入れや景色を眺めるのにとても便利です。

借景とは日本庭園などでよくみられる造園技法のひとつで遠くの山などの景色を庭の一部であるかのように利用する方法です。

縁側があると、窓から見える景色がまるで1枚の絵画のようになり、周辺の景色を含めて楽しめます。

 

部屋を広く見せる効果がある

縁側は住宅の床と同じ高さで設置されるため、部屋の奥行きが増したように見え、部屋を広く見せる効果があります。

ふすまや障子といった建具を全開にすれば、さらに部屋を大きく見せることができるでしょう。

 

縁側のデメリット

縁側には数多くのメリットがありますが、注意しなければならないデメリットもあります。

ここでは縁側のデメリットを3つ取り上げます。

居住スペースを圧迫してしまう

土地の広さが十分ではない場合、縁側を作ることで居住スペースを圧迫してしまうかもしれません。

住宅を建設するルールの一つに「建蔽率(けんぺいりつ)」があります。

建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことで、その土地に対してどのくらいの大きさまでなら建物が建てられるかを示しています。

建蔽率は土地によって決められています。

たとえば、建蔽率40%の土地であれば土地面積の40%までしか建物が建てられません。

もともと建蔽率が低く設定されているにも関わらず、縁側を設置してしまうと居住スペースが圧迫されて狭くなるかもしれません。

 

防犯対策やプライバシー対策が必要となる

縁側は開放的な場ですが、見方を変えればセキュリティ面で弱点を有している場でもあります。

外から入ってくる不法侵入者にとって、縁側は最も入り込みやすい部分となるからです。

縁側の防犯対策として有効なのは、内側の掃き出し窓に以下の対策を施すことです。

・防犯フィルムの貼り付け

・補助錠の設置

・窓用センサーライトの設置

また、縁側があると家の外から内部が見えやすいためプライバシー対策も必要です。

道路から丸見えになる位置に縁側を作らないことや掃き出し窓に目隠しフィルムを貼るといった対策をとると、プライバシーを守りやすくなります。

 

こまめに庭の手入れをしなければならない

縁側は庭とセットといってもよいほど、庭と結びつきが強い設備です。

庭が荒れ果ててしまうと縁側の魅力が大きく損なわれてしまうでしょう。

窓から見る景色を保つため、こまめに庭の手入れをしなければなりません。

縁側を作る目的をはっきりさせよう

新築住宅に設置する場合であれ、リノベーションなどで新規に追加する場合であれ、縁側の設置には相応のコストがかかります。

同時に、縁側を維持するには不断のメンテナンスも必要です。

設置を決断する前に、なぜ縁側が必要なのか縁側を作る目的をはっきりさせましょう。

自然の風を取り入れた通気性の良い家を作りたいのか、コミュニケーションの場として活用したいのか、庭の一部として考えているのかというように縁側にどのような役割を期待しているのか、はっきりさせましょう。

目的があいまいなまま縁側を作ってしまうと、何のために作ったのか分からなくなり、いつの間にか単なる物置になりかねません。

そうした事態を避けるには、設置前になぜ縁側を作るのかよく考える必要があります。

 

縁側のメンテナンスと修繕

縁側を良い状態で維持するには常日頃からの清掃や修繕が欠かせません。

清掃方法と修繕タイミングについて紹介します。

縁側の清掃と塗装

縁側は部屋と同じように定期的な清掃が欠かせません。

外と接しているため、部屋に比べると泥やホコリなどが付着しやすいためこまめに取り除く必要があります。

泥やほこりを放置すると湿気をため込む原因となって縁側の木材を痛めてしまいます。

木材保護剤を利用することで縁側の木材の劣化を防げます。

保護剤でコーティングすることで木材が湿気や虫から守られるため腐食が遅くなるという効果が期待できます。

 

縁側修繕

古くなった縁側を修繕する場合、現在住んでいる人のライフスタイルを考えたうえで縁側の活用方法を考えることが大切です。

縁側をリラックススペースとして使用するのか、庭のメンテナンスを手軽にするために利用するのかではリフォームの方向性が変わるからです。

リフォームを実施する前に、修繕した縁側をどのように使うのか家族で話し合った方がよいでしょう。

 

まとめ

今回は日本家屋でよく用いられてきた縁側についてまとめました。

縁側は夏の日差しを遮ったり、室温を調節したりといった場面で重要な役割を果たしてきました。

現代でも、家族や隣人・友人との交流の場として活用できます。

しかし、目的があいまいなまま縁側を作ってしまうと単なる物置スペースとなるかもしれません。

縁側のメリット・デメリットを吟味し、自分や家族にとって使い勝手の良い空間になるよう検討してから設置したほうがよいのではないでしょうか。

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