あたらしい家は明るくて風通しが良い家にしたいという声をよく耳にします。
住宅の明るさや風通しのよさは快適性を左右する重要なよそであるため、そうした声が上がるのもよくわかります。
今回は家の明るさを左右する採光と風通しにスポットを当て、メリット・デメリットや明るく空気の流れが確保できる家の例、注意点などについてわかりやすく解説します。
目次
採光や風通しについて詳しく知ろう
住宅において採光や風通しは重要な要素です。
ここでは、採用や風通しの良い家の基本知識を解説します。
採光とは
採光とは、建物内部に自然の光を取り入れることです。
建物を建てる際の基準や敷地、構造について定めた法律を建築基準法といいますが、この法律では一定以上の自然の光を建物に取り入れることが義務付けられています。
建築基準法では、光を取り入れる窓の面積は、原則、部屋の床面積の7分の1以上確保しなければならないと定められています。
窓が大きくなるほど家の中に光を取り入れやすくなりますが、窓が大きいことによるデメリットも発生しますので注意が必要です。
風通しが良い家とは
風通しの良い家とは、住宅の中に風の通り道がある家のことです。
建築基準法では、風通しについても決められています。
それによると、換気のための窓や開口部の面積を部屋面積の20分の1以上確保しなければならないと定められています。
風通しを良くするポイントは以下の3つです。
・窓を2ヶ所作る
・天窓をつくる
・風の通り道を確保する
1つ目のポイントは、窓を2ヶ所作ることです。
その際、窓の位置を南北の対角線にすると、風が住宅内を通りやすくなるためおすすめです。
2つ目のポイントは、天井近くに窓を作ることです。
外壁に設置された窓だけで換気するよりも、はるかに効率よく風通しを良くすることができます。
3つ目のポイントは、風の通り道に、風を遮るものを設置しないことです。
風が自由に行き来することで風通しが良くなります。
採光がよい家のメリット・デメリット
外の光をふんだんに取り入れる採光の良い家には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
それぞれについてみてみましょう。
メリット
採光がよい家のメリットは以下の3つです。
・部屋の快適性の向上する
・室内環境が良くなる
・光熱費を節約できる
それぞれの項目を見ていきます。
部屋の快適性が向上する
採光がよい家は、部屋が明るくなるため快適に過ごしやすくなります。
日差しが差し込む部屋で過ごしていると、日光を感じる時間が長くなるためセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。
セロトニンには、精神を安定させる効果や平常心を保つ効果、頭の回転をよくする効果があると考えられています。
また、太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなります。
参考:医療法人社団平成医会(セロトニン)
室内環境が良くなる
採光性の高い家は、室内環境もよくなります。
太陽の光が入りやすい場所は、湿度が低く紫外線が入ってきます。
これらの効果により、カビや細菌の繁殖が抑えられ、室内環境がよくなります。
室内環境が良好に保てるようになれば、アレルギー予防やカビの抑制といった効果が期待できるのです。
光熱費を節約できる
採光の良い部屋には、光熱費を節約する効果も期待できます。
自然光を取り入れることで部屋が明るくなると、昼間に照明を使う必要がなくなるため、電気代を節約できます。
室内に取り込んだ太陽光が部屋を暖める効果も期待できるため、冬場の暖房費を節約できる可能性もあります。
デメリット
部屋を明るくして採光性をよくするには、窓を大きくしなければなりません。
デメリットは以下の3つです。
・断熱性の低下
・家具や床の日焼け
・掃除の大変さ
それぞれの内容を見てみましょう。
断熱性が低下する
住宅の中で最も熱が出入りするのは窓です。
光を取り入れることを意識するあまり、窓をたくさん取り付けてしまうと、その分だけ断熱性能が低い住宅になってしまいます。
断熱性能とは、外の空気の熱や冷気を室内に入れずに遮断する性能のことで、断熱性能が低い住宅は、夏暑く、冬寒くなってしまいます。
春や秋のように気温が安定している時期は、大きな窓がある部屋は快適に過ごせますが、夏や冬は快適性が低下してしまうかもしれません。
大きな窓で断熱性を低下させないためには、高機能の窓の設置が必要です。
断熱性が高い窓の代表が樹脂サッシです。
中でも、ガラスを二重にする複層ガラスや3重にガラスを重ねて間に空気を含ませるトリプルグラスは高い断熱性能を持ちます。
大きな窓を設置して採光性を高める際は、断熱性の高い窓を選択したほうがよいでしょう。
家具が日焼けする
窓を大きくして日差しを取り入れると、家具が日焼けして変色してしまうことがあります。
光が多く入り込むため、日焼けする面積も大きくなってしまうのです。
日焼けを防ぐためには、カーテンを有効活用しなければなりません。
最も簡単な方法は遮光カーテンを導入することですが、これではせっかくの日差しの恩恵が受けにくくなります。
そこで活用したいのが、UVカット機能があるレースカーテンやブラインドなどです。
レースカーテンは、紫外線量を大幅にカットしてくれるため、家具や床の日焼けをある程度抑えることができます。
ブラインドを取り付けると、羽の角度を調整することで自分で明るさ調整ができるようになります。
あまりに日差しが強すぎる場合などは、ブラインドを閉じて家具や床材を紫外線から守るとよいでしょう。
窓の掃除が大変になる
窓を大きくするデメリットの一つに、窓掃除の大変さがあります。
窓にもいろいろな種類がありますが、窓の下部分が床まである掃き出し窓は、面積が大きくなるため掃除が大変です。
天井に近い部分は掃除がしにくいため、掃除が面倒になるかもしれません。
面倒だからといって窓の掃除を怠ると、結露が発生して黒カビが付着する恐れがあります。
大きな窓を設置する際は、メンテナンスが大変であることも頭に入れておきましょう。
風通しが良い家のメリット・デメリット
風通しの良い家にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット・デメリットをそれぞれ解説します。
メリット
住宅の風通しを良くすることで得られる4つのメリットを紹介します。
カビの発生を抑えられる
1つ目のメリットは、カビの発生を抑えられることです。
よく知られているように、カビは湿度が高い場所で繁殖します。
厳密にいえば、温度・湿度・栄養源の3つの条件がそろった場所で発生しやすくなるのです。
【カビが発生しやすい条件】
温度 | 約20~30℃ |
湿度 | 約70% |
栄養源 | 建材、ゴミ・ホコリ、皮脂や垢 |
これらの条件のうち、風通しを良くすることで温度や湿度を下げることができます。
窓を開けて、こまめに掃除を繰り返すことで温度や湿度を低下させながら、カビの栄養源を除去できます。
シックハウス症候群を予防できる
2つ目のメリットは、シックハウス症候群を予防できることです。
シックハウス症候群とは、汚染された室内の空気を吸うことで発生するさまざまな症状のことです。
シックハウス症候群の原因となる主な物質は以下のとおりです。
・ダニ
・カビ
・ハウスダスト
・細菌
・ホルムアルデヒド
ダニ、カビ、ハウスダスト、細菌は住宅に住んでいる以上、必ず発生してしまうためこまめに掃除をして取り除くしかありません。
新築物件で、長く居住していないにもかかわらず、入居してから目のかゆみや涙、ハナミズ、のどの渇き、せきなどの症状が発生したら、ホルムアルデヒドが原因である可能性があります。
ホルムアルデヒドは、合板の接着剤や木材の防腐剤、塗料などに使用されているため、それらが空気中に放出されることでシックハウス症候群の原因となります。
ホルムアルデヒドの害を防ぐため、住宅内の換気設備を活用していますが、風通しの良い家であれば、ホルムアルデヒドが室内にとどまりにくくなるため、シックハウス症候群が発生しにくくなります。
快適性が増す
3つ目のメリットは、快適性が増すことです。
風通しが良くなれば、室内に嫌なにおいがこもりにくくなるため、快適性能が向上します。
夏場は風通しが良いほど涼しく感じられるため、その点でも快適性をアップさせることができるでしょう。
住宅の寿命を延ばす
風通しが良いことを通気性がよいといいます。
通気性がよくなることで、結露の発生を抑えられます。
結露とは、空気中に含まれる水蒸気が、窓などで冷やされることで水滴に変化する現象のことです。
結露で住宅の湿気が高まると、天井や壁、床といった建材がカビてしまったり、腐ったりしてしまいます。
その結果、住宅の耐久性が大きく損なわれてしまうのです。
湿度が高くなるとシロアリが発生する確率も高くなってしまいます。
シロアリは水分を含んだ軟らかい木材が好物であるため、湿度の高い家はシロアリの格好の餌食となってしまいます。
シロアリによる食害も住宅の耐久性を大きく下げてしまう要因です。
通気性がよくなれば、結露が発生しにくくなるため、住宅の耐久性が損なわれるのを防ぐ効果が期待できます。
シロアリの発生も抑えられるため、結果的に住宅の寿命を大きく伸ばすことができるのです。
デメリット
住宅の風通しを良くすることで発生するデメリットもとりあげます。
・断熱性が低下する
・耐震性が低下する
・防犯面での注意が必要になる
デメリットをもう少し掘り下げてみましょう。
断熱性が低下する
1つ目のデメリットは断熱性の低下です。
風通しを良くするには、複数の窓を設置する必要があります。
採光の部分でも述べましたが、窓は断熱性という点では弱点になる場所であるため、窓が増えれば増えるほど、断熱性が低下してしまいます。
断熱性を維持するには、樹脂サッシやトリプルグラスを用いるなど、高い断熱効果を持つ窓を採用したほうがよいでしょう。
耐震性が低下する
2つ目のデメリットは耐震性の低下です。
窓を含む開口部には、耐震性を補強できる筋交いなどが入れられないため、地震の揺れに対する弱点になってしまいます。
かといって、窓を小さくしすぎれば風通しが悪くなってしまいます。
明るさや風通しを維持しつつ、窓の耐震性を強化するには、窓の耐震補強が必要です。
耐震性をアップさせるため、サッシメーカーでは耐震補強フレームを取り揃えているため、それらを使用することで窓の耐震性を向上させられます。
防犯面での注意が必要になる
3つ目のデメリットは防犯面での注意が必要となる点です。
住宅の防犯を考える際、窓は比較的容易に侵入できるため注意が必要です。
盗難に遭った戸建住宅の侵入経路の60%が窓からの侵入です。
風通しが良い大きな窓は、泥棒にとって侵入しやすいポイントであることを理解しておきましょう。
泥棒に侵入をあきらめさせるには、面格子や二重窓、割れにくいガラスの仕様が効果的です。
普段開け閉めしない窓であれば、ノブを取り外すのも効果的です。
採光や風通しがよい家の例
採光や風通しを意識すると、快適性が増すことがわかりました。
ここからは、具体的な事例を4つ取り上げます。
インナーテラスのある家
インナーテラスは、屋内又は半屋内に作られたテラスのことです。
壁や屋根などの囲いがあり、天候を気にすることなく使用できます。
しかも、室内と一体化しているため、住宅空間を広く見せることもできます。
洗濯物を室内干しする際も非常に便利です。
テーブルや椅子を配置すると、家族のくつろぎスペースや来客用のスペースとしても活用可能です。
ただし、建築面積が増えてしまうため固定資産税が高くなってしまう点や、使い勝手が悪いと物置になってしまう可能性がある点、光が入りすぎて部屋の温度が上昇してしまう点などについて注意が必要です。
ちなみに、2階以上に作られる似たような設備をインナーバルコニー、全面ガラス張りになっている施設をサンルームといいます。
吹き抜けのある家
採光性や通気性をよくするため、吹き抜けを作ることもできます。
吹き抜けとは、天井を作らず、上下の階を一つなぎにした空間のことです。
大きな建物や一般住宅の玄関などでよく見られますが、最近はリビングを吹き抜けにするケースも見られます。
吹き抜けを取り入れるメリットは、以下のとおりです。
・開放感がある
・採光性が高まり明るくなる
・通気性がよくなる
吹き抜け最大の魅力は開放感です。
床から天井まで、さえぎるものがないため広々とした印象になります。
リビング階段とセットで導入する人が多いのもよくわかります。
吹き抜けがあると、住宅密集地など光を取り入れにくい場所でも室内を明るくできます。
リビングを吹き抜けにすると、低い位置の窓から高い位置の窓に自然と空気が流れるため、通気性がよくなります。
しかし、2階面積が狭くなる点や冷暖房が利きにくくなる点、高い場所のメンテナンスがしにくくなる点に注意が必要です。
室内窓の設置した家
窓は外だけにつけるものではありません。
住宅内の部屋と部屋の間に設置する室内窓も、採光性や通気性を高めてくれる設備です。
室内窓があると、住宅内で開放感が出やすいことや家族間のコミュニケーションがとりやすいといったメリットがあります。
もちろん、今回のテーマである採光や風通しという面でも、室内窓は有効です。
室内窓があれば、住宅の外側に面していない部屋でも明るくでき、通気性を向上させることができるでしょう。
しかし、室内窓を取り付けてしまうと家具の設置が制約されてしまったり、部屋のプライバシーが損なわれてしまったり、コストがかかってしまったりするといったデメリットもあります。
天窓の設置した家
天窓を設置することで、明るさや通気性を確保した例もあります。
天窓とは、文字通り屋根に設置する窓のことで、ルーフ窓ともいいます。
天窓を取り付けると、外の光を取り入れやすくなるため部屋が明るくなります。
光をふんだんに浴びることで、健康維持の効果も期待できるでしょう。
開閉式の天窓を設置すると、住宅の通気性を一気に向上させることも可能です。
外壁に設置された窓だけで換気するよりも、はるかに効率よく風通しを良くすることができます。
とはいえ、天窓にもいくつかの注意点があります。
まず、天窓は設置されている場所の関係から、住民が自分で掃除するのが困難な場所です。
そのため、ほこりなどがたまりやすくなってしまいます。
次に、冷暖房の効率が悪くなってしまいます。
冷暖房効率をアップさせるには、断熱性の高い窓ガラスを使用するのが効果的です。
外界の影響を受けやすくなるのも、天窓の弱点です。
夏の日差しがあまりにまぶしく感じられたり、激しい風雨が窓に直接叩きつけられるため、通常よりも雨音を強く感じる可能性があります。
また、雨漏りの原因となることもあるため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
天窓は採光性と通気性を一気に向上させられる半面、デメリットも少なくないといえるでしょう。
まとめ
今回は、住宅の採光や風通しについてとりあげて解説しました。
住宅を明るくし、風を取り入れることで快適性や健康面での良い影響が期待できるとわかりました。
その一方で、窓を多くしたり大きくしたりする必要があるため、住宅の耐震性や断熱性に悪影響を与える可能性があることもわかりました。
インナーテラスや吹き抜け、室内窓、天窓など採光や風通しを良くするための設備もありますので、自分のライフスタイルと照らし合わせ、どの設備を設置すると自分の生活が快適になるか、設置前に入念にシミュレーションしたほうがよいでしょう。