間取りと日当たりの関係と特徴

インテリアや間取りは理想どおりなのに、どこか落ち着かない住まいになっていたら、日当たりが良くないせいかもしれません。

日当たりと間取りは関係が深く、快適で過ごしやすい空間を作り出すには欠かせない存在です。

ここでは、間取りと日当たりの関係から、方角によって異なる日当たりの特徴とともに、日当たりを改善する工夫もご紹介します。

 

日当たりの良い間取りは難しい?

一般的に住まいの間取りは南向きが良いといわれていますが、それは日本が北半球に位置しているからです。

北半球にある日本では、太陽は東から昇って西に沈むため、南を向いている間取りがもっとも長く日差しを受けられます。

東京都の月平均日照時間は約120〜180時間で、これを1日に換算すると約4〜6時間、1日のうちたった4分の1です。

できれば、すべての部屋の日当たりを良くしたいところですが、間取りや季節によって日当たりに差は出ます。

どの部屋も日当たりが良い間取りをつくるのは現実的には不可能なため、自分のライフスタイルに適した間取りを選ぶのが、快適な住まいにするポイントです。

 

方角によって異なる日当たりの特徴

住まいがどの方角を向いているかによって日当たりの特徴は異なるため、特徴を活かした間取りの使い方がおすすめです。

昔から人気の高い南向きにも、人気の低い北向きにもそれぞれ違った特徴があり、違ったメリット・デメリットがあります。

 

南向きの間取りの特徴

日本ではもっとも人気が高い南向きの間取りでは、1年を通して日当たりが良く、快適に過ごせる空間を作りやすいです。

もっとも日当たりが良い間取りとなるため、日中は電気を付けなくても明るく、日差しの暖かさで暖房費用が抑えられます。

人が活動する時間帯のほとんどで日当たりが良いため、家族が集まるリビングや寝室、作業スペースなど、さまざまな使い方に適しています。

ただし、日当たりが良いために夏は室内温度が高まりやすく、冷房費用が高くなってしまうデメリットもある点に注意しなければなりません。

また、日差しの強さや時間の長さから、家具や床、壁などが日焼けしやすい特徴もあるため、大切なものを置きにくいです。

 

東向きの間取りの特徴

東向きの間取りは朝日が差し込みやすい特徴があるため、朝早くから室内が明るくなり、午後には早めに暗くなっていきます。

南向きと北向きの間取りの特徴が混在するような間取りで、午前と午後で特徴が異なる点には、利用する際に注意が必要です。

お昼を過ぎると日差しが入りにくくなるため、夏には比較的涼しくなりやすいですが、冬は寒さが厳しくなります。

間取りの採光性によっては、午後には照明を付けなければ手元が暗くて作業がしにくくなるかもしれません。

平均日照時間から考えると、日が差し込む時間は午前中の約2〜3時間と短い時間に限定されてしまう特徴があります。

 

西向きの間取りの特徴

西向きの間取りの特徴は、午前中はほとんど日当たりが良くありませんが、午後から夕暮れまで日が入る間取りです。

日照時間で考えると、東向きの間取りと午前と午後が反転したような環境で、条件はほとんど変わりません。

しかし、日差しが強い西日が入る点に注意しておかないと、大切な家具や室内が日焼けしてしまう可能性があります。

強い西日が入るため、冬でも午後は暖かく過ごせ、日が長い季節には夕暮れどきまで室内は明るく保ちやすいでしょう。

代わりに、日が長い夏には夕暮れが迫る時間帯でも日差しが入るため、室内温度が高いまま夜を迎えてしまいます。

 

北向きの間取りの特徴

北向きの間取りは、日当たりが良くない・縁起が良くないなどの理由から人気が低いですが、メリットがまったくないわけではありません。

日差しが入りにくい北向きの間取りは、日当たりは良くありませんが、暑い日差しが入らないからこそ1日中涼しく過ごせます。

日当たりが良くない特徴がメリットになり、大切な家具や荷物、床や壁などの日焼けの心配が少ないです。

デメリットは、湿気がこもりやすい点とカビが発生しやすい点ですが、適切に換気や清掃をおこなっていれば問題にはなりません。

採光性によっては、日中でも照明を付けないと手元が暗くて見えにくく、電気代がかさむ一因となります。

 

日当たりが暮らしに及ぼす5つのメリット

方角によって日が当たる時間帯や室内環境に差があらわれますが、日当たりが良い間取りを選ぶと、暮らしにどのような影響を及ぼすかイメージできるでしょうか?

日当たりと間取りとの関係を考えた際に、暮らしやすさにつながる代表的な5つのメリットをご紹介します。

 

日当たりが良い間取りは洗濯物が楽!

洗濯する時間は人によって違いますが、日当たりが良い間取りは朝や夕方など、いつ洗濯物を干しても乾きが早いです。

部屋干しする際には誰もが日中の日当たりを気にかけますが、日当たりが良くない北向きでは、洗濯物は思うように乾きません。

しかし、日当たりがよければ、短い日照時間でも洗濯物が乾きやすく、布団などの大きなものの乾燥も早いです。

これはベランダやバルコニーでも同じで、日当たりのよさが家事を少し楽にしてくれます。

 

日が傾いても部屋に日差しが入る!

日当たりが良い間取りでは、長時間日当たりを確保しやすいため、日が傾いても室内が明るく保たれます。

南向きはほぼ1日中日差しが入り、西向きでは夕暮れどきまで室内の照明を付けなくても活動しやすいです。

照明にかかる電気代は冷暖房費用に比べれば小さな金額ですが、日々の小さな節約が光熱費全体の節約へとつながります。

何十年と長く住み続ける住まいだからこそ、無理をしない節約が叶うと、将来も安心して暮らしていけるでしょう。

 

カビが繁殖しにくい!

日当たりが良くない間取りは人の出入りが少なく、室内に湿気がこもってカビが繁殖しやすい環境ができあがってしまいます。

カビが繁殖する条件は、高い湿度が維持された環境にあるため、一見すると日当たりとは関係がありません。

しかし、人が出入りする回数が多い点と換気と紫外線の殺菌効果によって、日当たりが良い間取りではカビが繁殖しにくいです。

日当たりが良い間取りでは、意識せずにカビ予防がおこなえて、過ごしやすい環境を整えられます。

 

冬の暖房費用を抑えやすい!

夏の冷房と同じく、冬の暖房費用は光熱費を高める一因ですが、日当たりが良いだけで、暖房費用を抑えるメリットが得られます。

太陽光に含まれる赤外線には物体を温める作用があるため、日当たりが良い間取りは冬の寒さを和らげてくれます。

夕方から夜間にかけて暖房は必須ですが、晴れた日の日中は日差しの暖かさだけで過ごす住まいも夢ではありません。

省エネ住宅でも、できるだけ冬の日照を多くとるように推奨されており、日当たりが良い間取りは暮らしを快適にするメリットだとわかります。

 

体内時計をリセットしやすい!

目覚めてすぐに朝日を浴びると、気持ちがスッキリして脳が活動しやすくなりますが、それは体内時計がリセットされているからです。

人体のリズムはもともと24時間よりやや長めの周期を持っていますが、太陽ほど強い光を浴びると、そのリズムがリセットされます。

体内時計リセットによって日中に活動的になり、日が暮れると自然と眠気をもよおすようにリズムが整えられ、生活にメリハリが出るでしょう。

日当たりが良い間取りでは、自然と朝日を浴びやすくなるため、体内時計がリセットされて、心身の調子を整えやすくなります。

 

日当たりから考える間取りの決め方

日当たりが良い間取りが暮らしを快適にしてくれるのは明らかですが、大切なものや床などが日焼けしやすいデメリットは見過ごせません。

どの間取りがどのような使い方に適しているか、間取りと日当たりの関係を考えてみましょう。

 

1日中日差しが入る南向きはリビング!

朝起きてから夜寝るまで1日の大半を過ごすリビングは、日当たりがもっとも良い南向きがおすすめです。

1日中日当たりが良く、どの時間帯でも室内は明るく保たれるため、快適に過ごせる室内環境を整えやすくなります。

バルコニーやテラスを設ければ、洗濯物や布団などを干すスペースも確保できて、一石二鳥です。

ただし、窓際は常に日差しが入り込み、大切な物が日焼けしてしまう可能性がある点には注意しましょう。

 

朝日が差し込む東向きは寝室!

スッキリ爽快な目覚めと体内時計リセット効果を求める場合は、朝1番の日差しを浴びるために東向きの寝室がおすすめです。

太陽が昇る東に大きな窓があると、差し込む朝日で自然と目を覚まし、心地よく1日を始められます。

また、朝早くからキッチンを使う方は、キッチンを東向きに配置して、日当たりを確保するのもおすすめです。

 

洗濯物を干すなら西向きの部屋! 

南向きの間取りは洗濯物を干すスペースに向いていますが、午後から日当たりが良くなる西向きの間取りも適しています。

西日は午前中よりも日差しが強くなるため、洗濯物を乾かすのに適しており、部屋干しでも乾きやすいでしょう。

朝に洗濯物を干して、仕事から帰るまでに洗濯物が乾いていれば、乾燥機に入れて乾かす手間が省けます。

 

日差しが入りにくい北向きは書斎やパントリー!

日当たりが良くない北側は、のんびり寛ぐリビングやダイニングではなく、短時間利用する書斎やパントリーなどの保管庫がおすすめです。

1日中ほとんど日差しが入らない点は、快適に過ごすための部屋にはデメリットですが、日差しが入らない点がメリットになれば活用方法はたくさんあります。

その1つが書斎やパントリーなどで、時間帯で明るさが変わったり室温に影響が出たりしにくいため、室内環境を一定に保つ使い方におすすめです。

 

日当たりを良くする5つの工夫

立地や間取りが原因で日当たりが良くなくとも、さまざまな工夫を施せば日当たりを改善し、過ごしやすい環境を作り出せます。

手軽に自分でできることから、施工業者に依頼が必要なことまで5つの工夫を試してみませんか?

 

間仕切りを減らす

室内の可動式間仕切りは、広い空間を自由に隔て、共有スペースの一部に個人スペースを作れるように、レイアウトを簡単に変えられます。

空間を仕切っているため、窓から差し込む光をも遮ってしまい、窓から遠いスペースほど薄暗くなってしまうかもしれません。

可動式間仕切りを減らして空間をつなげれば、窓から差し込む光は部屋の奥まで届きやすくなります。

どうしても間仕切りを使用したい場合には、日差しを遮らない方向に設置するよう、日当たりを考えてみてはいかがでしょうか。

 

シェード・障子戸で光を取り入れる

隣家と近い・交通量が多い道路と面しているなどの理由からカーテンを開けられず、日当たりが良くない場合は、光を取り入れたカーテンに変える方法がおすすめです。

遮光率の高いカーテンほど光を通さず、室内の様子が外に漏れる心配がありませんが、日中でもカーテンを閉めておかなくてはならない場合、室内は薄暗くなります。

カーテンではなく、光を通す障子戸やシェードを使用すると、外から覗かれる心配がなく、日当たりを確保できます。

 

リビングを2階に移す

住宅密集地では、カーテンを障子戸やシェードに変えても日当たりが変わらないケースがあります。

そんなときは、1階よりも日当たりを改善しやすい2階に、1日のほとんどを過ごすリビング有リビングを上層階へ移す工夫をしてみましょう。

上層階ならば1階よりも隣家との距離がとれるため、日当たりを確保し、過ごしやすい空間となります。

また、上層階にリビングがあれば、外からの視線を気にする必要もなくなり、プライバシーの保護も可能です。

 

小さい窓を増やす

すでに日差しを取り入れる窓が少ない場合には、小さな窓を増やすリフォームによって、日当たりを改善できます。

一気に日当たりを良くしたいならば、大きな窓を設置するほうが簡単ですが、それでは工事の規模が大きくなるため、耐震性に影響を及ぼしかねません。

大きな窓を1つ増設するよりも小さな窓を複数増設したほうが、大規模な工事を必要とせず、建物の耐震性に影響を与えにくくなります。

複数の小さな窓であれば、日差しが強いと感じたときには部分的にシェードやカーテンを閉じて、日当たりの調整が可能です。

 

中庭を作る

隣家と近いなどの理由から、窓を増やしにくい立地にある場合には、中庭を作り、そこから日差しを取り込む方法があります。

日当たり改善を目的とした中庭であれば、1坪ほどの坪庭と呼ばれる小さな庭でも十分に目的を果たせます。

京都の町屋では、間口が狭く奥行きがある特徴的な構造をしていたため、日当たりや通気性確保のために坪庭を設けていました。

現代でもこの方法は有効で、日当たり改善だけでなく、外と面していないプライベートな庭を手に入れられます。

 

まとめ

住まいの日当たりは方角と深く関係していますが、北向きだからといって快適に過ごせない間取りではありません。

日当たり具合によって、間取りを使い分け、ライフスタイルに合った住まいを完成させるのが重要です。

現在日当たりが良くない間取りでも、工夫すれば日当たりを改善し、過ごしやすい住まいを作れるでしょう。

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