「ヌック」という言葉をご存じですか。
ヌックは、住宅内の居心地が良いこじんまりした場所のことで、最近、取り入れる家が増えています。
などで区切った閉鎖的な空間ではなく、家族が集う空間の一角に作られる場所であるため、人と人との結びつきを感じやすい間取りとして人気があります。
今回は、「ヌック」の意味や設置場所、特徴、メリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。
目次
ヌックとは
あまり聞きなれない言葉であるヌックとは、どのような設備なのでしょうか。
語源や意味、DENや小上がりとの違いについて解説します。
ヌックの語源と意味
ヌックの語源はスコットランド語のNeuk(ヌーク)で、英語ではNookと表記されます。
もともとは、家族が集まって談笑するスペースのことでしたが、現在は趣味や勉強をする小さな快適空間を意味するようになりました。
ヌックは2〜3畳ほどの比較的狭い場所です。自宅の場合、リビングのそばにリラックスできる小スペースを作ると考えるとイメージしやすいかもしれません。
DENや小上がりとの違い
ヌックと似たものにDENや小上がりがあります。DENとは、目的が決まっていない小部屋のことです。
ヌックがリビングなど比較的開放的なスペースに面しているスペースであるのに対し、DENは仕切りなどがあって独立性が高いという違いがあります。
小上がりは、床が少し高くなった場所のことです。
レストランなどでよく見かけるため、イメージしやすいかもしれません。
比較的開放的であり、ヌックのような狭さがありません。
ヌックはどこで作る?
ヌックには様々なタイプがありますが、ここでは4つのタイプを紹介します。
設置場所 | 活用方法 |
LDK | LDKの一角に設置し、キッズスペースや
家族のプライベート空間として活用 |
窓辺 | 窓付近の明るい場所に設置し、
読書スペースなどとして活用 |
階段下 | 机や本棚を設置したり、
作業スペースとして活用 |
子ども部屋 | 子どもの秘密基地として活用 |
設置場所によって活用方法が異なるため、設置前にどのように利用するかシミュレーションしたほうがよいでしょう。
ヌックの特徴
ヌックが持つ2つの特徴を紹介します。
他の部屋と区切らない
1つ目の特徴は他の部屋と区切らないことです。
基本的に、壁やドアといった仕切を設けず、本棚やソファーなどで緩やかに仕切ります。
部屋の奥まった部分を活用して、周囲と区別し、半独立した場所としています。
したがって、リビングなどの広い部分と完全に切り離されているわけではありません。
家族でシェアできる
2つ目の特徴は、家族の誰もが使用できる場所であることです。
壁やドアで区切られた小部屋のような場所は、誰かが占有してしまうことが多いのですが、仕切をあまり意識させないヌックは、家族全員の共有スペースとして利用可能です。
そのことにより、誰もがくつろげる場として活用できるのです。
ヌックのメリット
ヌックにはどのようなメリットがあるのでしょうか。5つのメリットを紹介します。
デッドスペースを活用できる
1つ目はのメリット、デッドスペースを活用できることです。
住宅には、利用しにくいスペースであるデッドスペースが出来てしまいます。
設計内容をかなり自由にできる注文住宅であったとしても、設計上、デッドスペースは発生してしまいますが、その場所を活用できるのです。
デッドスペースができやすいのは階段下や窓の近くなどですが、これらの場所はヌックに向いている場所でもあります。
階段下はクローゼットなどの収納として活用するケースが多く見られますが、作業用のスペースにすることもできます。
そうすると、リビングにいながらリモートワークができる場として活用することができるでしょう。
窓下は棚などを置いて収納スペースに利用するケースが多いかもしれませんが、ここも活用しやすい場所です。
太陽の光が入り込む窓の下は、とても暖かい場所です。
猫が日向ぼっこをすることからわかるように、やわらかい陽光が差し込む窓下は、居心地が良い場所でもあります。
出窓の下に人が寝られる程度のヌックを作り、その近くに書棚を作ると、快適な読書スペースができ上がります。
部屋の個性を出せる
2つ目のメリットは、部屋の個性を出せることです。
ヌックは比較的新しい住宅設備であり、導入している家庭は多くないため、「自分だけの家」のシンボルとして設置することができるでしょう。
ヌックにはこれといった決まりがないため、設置場所・形状・デザイン・色など家主の自由に決められます。
自由度が高い注文住宅に取り入れたい設備の一つではないでしょうか。
空間のメリハリができる
3つ目のメリットは、空間のメリハリができることです。
ヌックには空間を有効活用できるという実利的な面だけではなく、おしゃれな空間を演出できるというデザイン面でのメリットがあります。
リビングなどは広くて開放的なデザインを採用することが多いですが、ともすれば、画一的になりがちな場所です。
広い部屋でメリハリをつけるには、ソファーなどで視界を遮らない低い仕切りを作ったり床の色を変えたりする方法があります。
部屋のトーンに変化をつけるという点でヌックは同じような効果を期待できます。加えて、壁やドア、仕切りに比べると圧迫感を感じにくいというメリットもあります。
趣味の場に使える
4つ目のメリットは、趣味の場として活用できることです。たとえば、リビングや階段下のスペースに、自分が好きな絵や小物を飾って趣味の場にすることができます。
ゲームや本を配置して、ゆっくりくつろぐ場所にしてもよいでしょう。
あるいは、手芸をするスペースやプラモデルをつくるスペースとしても活用できます。家族の思い出を飾る場所にしてもよいでしょう。
広すぎない場所だからこそ、色々と手を加えるのにちょうどよいのです。
多目的で使える
5つ目のメリットは、多目的で使用できることです。キッチンやリビング、子ども部屋のように目的が明確な場所ではないため、自由に使用できます。
どのように使用するかは家族の自由です。
家族が思い思いの過ごし方をする場として、ヌックを活用できるでしょう。
ちょっとしたお昼寝ができる空間にすることもできますし、子どもの隠れ家のような場所にすることもできます。
あるいは、絵本の読み聞かせ場所として利用するのもよいでしょう。
子どもの成長に応じて、フレキシブルに用途を変えることも可能です。
ヌックのデメリット
デッドスペースの活用や個性の演出、空間のメリハリなど様々なメリットがある半面、注意すべきデメリットもあります。
ここでは、3つのデメリットを解説します。
生活スペースを圧迫してしまう
ヌックを作ると、生活スペースを圧迫してしまうリスクがあります。
階段下のデッドスペースは、収納として活用できます。
デッドスペースを使わずに、ヌック専用のスペースを作ると、リビングや各部屋の面積が小さくなってしまうかもしれません。
ゆったりと過ごすために作ったはずなのに、かえって、家が狭く感じてしまうのでは本末転倒です。
ヌックを作る前に、家全体のバランスを確認して使い心地が悪くならないか、十分検討する必要があるでしょう。
設置費用がかかる
ヌックは、通常の設計プランに含まれていない設備であるため、新たに設置すると設置費用が掛かってしまいます。
単なるスペースを作るだけであれば、必要最低限の費用で済むかもしれませんが、本棚やカウンターを造作すると、追加料金が必要となります。
設置費用は、どのような設備を造作するかによって変わってきます。
ベンチを造作 | 10~20万円程度 |
ロフトを増設 | 50~100万円程度 |
間仕切りを造作 | 20~30万円程度 |
新築の注文住宅にヌックを作る場合と、リフォーム・リノベーションで作る場合では費用が異なります。
また、造作する設備の内容によっても費用は変化します。
ヌックを作る前に、ハウスメーカーや工務店と見積もりについてしっかり打ち合わせしましょう。
少しでも設置費用を安くしたいのであれば、複数の業者に見積もりを取る相見積もりを行った方がよいでしょう。
冷暖房を必要とする可能性がある
ヌックを快適に使うには、電気や冷暖房の設備が必要となります。
リビングの一角をヌックにする場合、室温調整の必要性は低いですが明るく照らすための照明設備が必要となるかもしれません。
室内照明のことを考慮せず、照明設備を追加しない状態で作ってしまうと、ただの薄暗い場所になり、使わない場所になってしまうでしょう。
廊下や階段下に作る場合、部屋の冷暖房と切り離されるため新たに冷暖房を配置しなければなりません。
冷暖房を設置しない場合、夏や冬に全く使わない空間になるかもしれません。
ヌックを検討している場合は、空調のことも考慮に入れる必要があります。
また、専用の冷暖房を設置すると、その分だけコストがかかってしまうため経済的に大きなデメリットになる可能性があります。
居心地の良いヌックを作るためのポイント
ヌックにはさまざまなメリット・デメリットがあるとわかりました。
少しでも快適で過ごしやすい場所をつくるには、何に気を付けるとよいのでしょうか。
3つのポイントを解説します。
ヌックの目的を決める
1つ目のポイントは、設置する目的を決めることです。
ヌックのメリットの一つは自由度の高さです。
しかし、目的を考えずにヌックを設置すると、活用されずに単なる物置になってしまうかもしれません。
そもそも、ヌックは水回りやリビング、キッチンなどとことなり無くても問題ない場所です。
何となく作ってしまうと、ただ単に使い勝手の悪いデッドスペースを増やすだけといった結果になりかねません。
ヌックを設計に盛り込んだり、リフォーム・リノベーションで取り入れる際は、ヌックを作る目的を明確化しておきましょう。
居心地の良い場所に作る
2つ目のポイントは、居心地の良い場所に作ることです。先ほど、デッドスペースを活用する方法として有効であると解説しましたが、居心地が悪い場所に作ってしまうと、結局使わない場所になってしまいます。
人の出入りが多すぎて集中できない場所や、日陰で居心地の良さを感じにくい場所であれば収納にした方がよいかもしれません。
居心地がよく、くつろげるイメージがもてる場所に作りましょう。
通気性を考慮する
3つ目のポイントは、通気性です。空気のとおりが悪く、こもってしまうような場所はヌックの設置場所として不向きです。
快適な隠れ家として利用するのであれば湿気がこもりにくく、くつろげる場所をヌックにした方がよいでしょう。
まとめ
今回はヌックのメリット・デメリットや居心地の良いヌックの作り方を中心に解説してきました。
ヌックは、他の部屋と仕切られていない場所でありながら自分だけのスペースとして活用できる場所です。
趣味のスペースや部屋の個性を出す場として有効活用できる設備ですが、生活スペースの圧迫や設置費用といった面でデメリットがあります。
メリット・デメリットをよく比較したうえで、ヌックを設置したほうがよいのではないでしょうか。