ローコストメーカーはなぜ避けられるのか?メリット・デメリット

Webで「ローコストメーカー(ローコスト住宅)」と検索すると、「デメリット」や「後悔」といった単語が関連語として表示されます。

大手ハウスメーカーに比べると建設費がかからず、安く建てられるのがローコスト住宅の魅力ですが、なぜ、デメリットや後悔といったことにつながってしまうのでしょうか。

本記事ではローコストメーカーの住宅が安い理由やローコストメーカーを選んで後悔した失敗例をとりあげ、デメリットや後悔している理由を探ります。

これからローコストメーカーに注文住宅を依頼しようとしている方はぜひ参考にしてください。

 

ローコストメーカーとは

ローコストメーカーの厳密な定義はありませんが、大手ハウスメーカーに比べて比較的安い価格で住宅を建てるハウスビルダーや工務店をローコストメーカーといいます。

大手ハウスメーカーの坪単価は60~100万円ですが、ローコストメーカーであれば坪単価30~50万円ほどで家を建てられます。

坪単価で考えると大手ハウスメーカーは2,400~4,000万円、ローコストメーカーは1,200~2,000万円となります。

ローコストメーカーは大手ハウスメーカーの半額程度で家を建てられる計算になります。

「住宅を建てたいけれども予算が限られている」という人にとって、ローコストメーカーは魅力的な選択肢となるでしょう。

ローコストメーカーに依頼するメリット

ローコストメーカーには3つのメリットがあります。

  • 建築コストが安い
  • 工期が比較的短い
  • 金銭的負担が小さいため建て替えやすい

ローコストメーカーで一番の魅力は建築コストが安いからです。

さきほど大手メーカーと坪単価で比較しましたが、半額程度で家を建てられるとなるとかなり刑事的負担が軽くなります。

住宅の平均購入価格は土地付き注文住宅で約4,700万円、建売住宅で3,700万円、中古戸建で約2,700万円となっています。

中古戸建並みの金額で新築を建てられるというのは大きなメリットといえるでしょう。

ローコスト住宅の大半は形が決まっている「規格住宅」であるため、現場で施工しやすいように部材が加工されています。

そのため、住宅を組み立てる際の手間が少なく、工期を短縮できます。

購入資金が安いことから、完済までの期間を見かくできるため建て替えのハードルが低いというメリットもあります。

たとえば、二世帯住宅を建設した後で子どもの独立などにより家族構成が変化したことを受けて平屋に建て替えることもできます。

ローコストメーカーの住宅が安い理由

ローコストメーカーが大手ハウスメーカーより安いのには理由があります。

ここでは、ローコストメーカーが坪単価を抑えられる5つの理由を紹介します。

宣伝広告費を抑えているから

ハウスメーカーは住宅販売を行う際にテレビCMや折り込みチラシ、ネット広告などさまざまな方法で宣伝活動を行っています。

ローコストメーカーは大手ハウスメーカーのようなテレビCMなどを行わず、広告の範囲を限定したり、Web上での広告だけにしたり、モデルハウスを建てなかったりして宣伝広告費の削減を行っています。

人件費を抑えているから

ローコストメーカーは人件費の削減も行っています。

たとえば、自前の職人や大工の数を最小限に抑えて外部業者に依頼したり、住宅建設の方法を規格化して手間や工数を削減したりするといった工夫を行っています。

また、営業担当者の人員を減らして受付機能を本社に集約したり、工程管理を規格化したりすることで現場監督の業務を減らすことでも人員を削減できます。

材料費を抑えているから

ローコストメーカーは以下の手法で材料費を抑えています。

  • 材料を大量に仕入れて仕入単価を下げる
  • 特定の業者と仕入れに関する直接契約を結ぶ
  • より安価な材料や代替材に変更する

ローコストメーカーは価格を安くして受注を増やすとともに、大量の材料を購入します。

仕入れる量が多くなるほど仕入単価が安くなるため、さらなるコストダウンが可能となります。

特定の業者と長期契約を結ぶことでも材料コストを下げることができます。

業者側は安定した販売先を確保できますし、ローコストメーカー側は長期間にわたって安く材料を仕入れられます。

材料のグレードを下げることでもコストを抑えられます。

たとえば、高価な天然木を使用していた部分をより安価な天然木や人工素材、合成木材に変更するといった方法でコストを下げます。

間取りをシンプルにしているから

間取りやデザインを規格化することでもコストダウンが可能です。

使用する部材を統一し、大量に一括仕入れできるようになるからです。

細かく顧客の希望を取り入れるフルオーダーの注文住宅よりも自由度がなくなりますが、コストを削減することが可能となります。

また、間仕切り壁が少ない間取りにすることで壁や柱、ブラスターボード、壁紙、コンセントといった部材の材料費を抑えることができるため、これもコストダウンにつながります。

凹凸が少ないシンプルな正方形に近づくほど、コストを安くできます。

コストが安い設備を選んでいるから

設備のグレードを安くすることでもコストダウンが可能です。

窓やクローゼットの数を減らしたり、水回りの設備のグレードを下げたりするなどして少しでもコストを安くします。

あるいは、最新式の設備よりも一昔前の設備にすることでもコストを下げられるでしょう。

設備のグレードを下げたうえで大量に発注すれば、仕入れコストの削減も可能となりますし、同じ設備を何度も扱えばその設備に関する職人の熟練度も向上します。

 

ローコストメーカーでよくある失敗

ローコストメーカーを選ぶことで住宅の建設コストを下げられることがわかりました。

しかし、ローコスト住宅を建てた人の中には後悔している人もいるようです。

ここからは、ローコストメーカーを選んで失敗したと感じた人たちの事例を見てみましょう。

断熱性が低く温度差が大きくなってしまった

ローコスト住宅の失敗談としてよく聞くのが、住宅の断熱性に関する不満です。

断熱性とは、住宅の内外の熱の移動を抑える性能のことで、断熱性が高い家は真夏の熱気を家に入れず、真冬の寒さを住宅に伝えないよう遮断してくれます。

断熱性が低い住宅にしてしまうと、夏は暑く冬は寒い住宅となり、居住時の快適性が大きく損なわれてしまいます。

コストを下げるために断熱材のグレードを下げてしまうと、十分な断熱性が確保できなくなり温度差が大きな住宅となります。

そうなると、部屋を暖めるための暖房費や夏場に室内を冷やすための冷房費が多めにかかってしまい、ランニングコストが悪い住宅となってしまうのです。

断熱性の低さは健康面でも悪影響を与えます。

住宅内の温度差が大きくなることで心配になるのがヒートショックの発生です。

ヒートショックとは、急激な気温差などが原因で血圧が大きく変動して心臓や血管の疾患が起こることです。

ヒートショックが原因で亡くなった方は14,000人いて、同じ年に交通事故で亡くなった約7,000人を大きく上回っています。

暖かい部屋から寒い部屋に移動すると血管が縮んで血圧が上がります。

リビングから脱衣所、脱衣所から風呂場と移動するにつれ寒くなるため血圧が急激に上昇してしまいます。

しかし、浴槽に入るとお湯のおかげで体が温まり血管が広がって血圧が急激に下がります。

この血圧の乱高下により心臓に強い負担がかかって心筋梗塞や脳卒中を引き起こしてしまうのです。

ローコスト住宅を選択する場合は、断熱材の厚みや種類、断熱性の高さを示す断熱等級、断熱性に大きな影響を与えるサッシや窓ガラスの性能などをチェックしましょう。

メンテナンスのコストが高くなってしまった

住宅は長期にわたって使用するため、住んでいるうちに色々な場所が経年劣化します。

外壁に関して公開している人も少なくありません。

ローコスト住宅で使用されがちな建材の一つに窯業系サイディングがあります。

バリエーションが豊富でコスパがよく、工期が短いといったメリットがありますが、熱を蓄えてしまったり継ぎ目が劣化しやすいためメンテナンスが必要だったり防水性がなかったりといったデメリットもあります。

こうしたデメリットをカバーするため、外壁塗装を行って塗膜を作って保護します。

しかし、塗膜がはがれてしまうと大規模な修繕が必要となり大きなコストがかかります。

また、グレードが低い設備にしたせいで早めに壊れてしまったり、交換頻度が高くなったりといった点で後悔している人もいます。

設備の追加やグレードアップで価格が上がってしまった

ローコスト住宅の「標準仕様」は必要最低限のものが備わっているにすぎず、それ以外のものはオプションで追加するのが一般的です。

「あれも必要」「これが足りない」といって次々に設備を追加すると、いつの間にか大手ハウスメーカーに近い金額になるかもしれません。

かといって、住宅の建材などのグレードが大手ハウスメーカー並みになるわけではないため、結果的に割高な買い物になってしまう恐れがあります。

ローコストメーカーで住宅を建てる場合は、あらかじめ必要な設備やオプションをはっきりさせ、予算内で住宅が建てられるように計画を練りましょう。

アフターフォローに問題があった

アフターフォローに関して不満があった人もいます。

新築住宅の場合、引き渡し後の定期点検や補修工事といったアフターフォローを設定するのが一般的です。

しかし、ローコストメーカーの一部はアフターフォローを簡素化していることがあります。

具体的には、他のハウスメーカーよりも保証期間が短かったり、保証内容が通常よりも制限されていたり、担当者と連絡が付きにくく対応が遅かったりといったケースが見られます。

欠陥が見つかったとしても保証期間が過ぎてしまえば対応してもらえません。

大手ハウスメーカーの中には有償ではありますが、最長で60年保証する企業もあるなどローコストメーカーよりもアフターフォローが充実しています。

また、アフターフォローに関する不満の中には「引き渡しが終わったら担当者の態度が変わった」といった声も聞かれました。

長期間にわたって利用することを踏まえ、万全の対応をしてほしいのであればローコストメーカーではなく充実した保証を提供しているハウスメーカーを選択したほうがよいでしょう。

 

希望の間取りを実現できなかった

規模の間取りを実現しにくいというのもローコストメーカーのデメリットです。

コストを少しでも削減するため、ローコストメーカーは建築部材の規格化を行っています。

そのため、一定の間取りパターンから選択しなければならないことも珍しくありません。

間取りパターンが豊富なローコストメーカーもありますが、完全自由設計に比べると希望の間取りを実現しにくいというデメリットが残ります。

間取りに強いこだわりがあるのであれば、ローコストメーカーよりも自由度が高い、自由設計ができるハウスメーカーや工務店に依頼したほうがよいでしょう。

想像したよりも安っぽく感じてしまった

完成した住宅を見て「思ったよりも安っぽい」と感じる方もいます。

安っぽく感じる理由は以下の2つです。

  • トレンドデザインを取り入れすぎる
  • 住宅の質感が写真やホームページと違う

トレンドデザインとは、その時代に流行しているデザインのことです。

ローコスト住宅は時代に合わせて「典型的」な住宅を複数のパターンから選んで建てる傾向が強いため、年月が経つと時代遅れに見えてしまうかもしれません。

どの家を見ても「似たようなもの」となってしまい、安っぽく感じてしまうのです。

サイトやパンフレットの写真と比べると建物の質感が違うことも安っぽく感じる理由の一つです。

ローコストメーカーはコスト削減のためモデルハウスや住宅展示場を設けていないケースがあるため、実物を見て質感を確認する機会が大手ハウスメーカーよりも少なくなりがちです。

画像だけから住宅の雰囲気を想像してしまいがちなのです。

その結果、出来上がった住宅が自分の想像とずれがあり、安っぽく感じてしまうのです。

写真やパンフレットと実物のギャップを埋めるには実物を見るのが一番です。

完成のイメージがなかなかできない方は、モデルハウスを展示しているローコストメーカーを選ぶと五でしょう。

住宅に欠陥があった

最もあってはならない失敗は住宅の欠陥です。

建設コストを少しでも安くするため、基礎や構造といった最も大事な部分の施工で手抜きがあったり、配管や配線の不備があったりといったケースが見られます。

断熱材が予定通り配置されておらず、断熱性能が低下した住宅になっていたこともあります。

価格が安いからといって欠陥住宅を建ててよいわけはありませんが、予算や人員が限られているため欠陥住宅が生まれやすい条件が整っていることは否めません。

ローコストメーカーを選ぶ際は、ハウスメーカーの評判をしっかりと調べ、施工管理に問題がないか調べられる限り調べたほうがよいでしょう。

ローコストメーカーで失敗しないためのポイント

ローコストメーカーには価格が抑えられるというメリットがありますが、反面、住宅性能やコスト、アフターフォローなどの面で問題がある業者がいることがわかりました。

ここからは、自分がハウスメーカーを選ぶ際にどうすれば失敗しないかについて取り上げます。

予算や設備の優先順位を明確にする

自分の希望予算内ですべて実現することは困難ですが、優先順位をつけることは可能なはずです。

冷暖房設備を優先するのか、窓の断熱性を優先するのか、収納を優先するのか、水回りを優先するのか、家族によって優先するべきものはさまざまです。

住宅を建てる前に、どの設備を優先的に設置するかしっかり話し合い、予算内で収まるかシミュレーションしましょう。

住宅性能をチェックする

住宅性能で何を優先するかも重要なことです。

快適性・安全性・居住性などを踏まえて考えると、耐震性と断熱性のチェックは欠かせません。

耐震性は「耐震等級」を見るとわかります。

耐震等級とは地震がおきたときに、どれだけ建物が倒壊・損壊しにくいかを示した基準で1~3の3つのレベルに分けられています。

耐震等級2は耐震等級1の1,25倍、耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の地震の力に耐えられます。

断熱性についても「断熱等級」で確認可能です。

断熱等級は1~7の合計7段階で設定されています。

断熱等級1が1980年(昭和55年)の省エネ基準未満、断熱等級2は1980年の省エネ基準と同じですので、1や2は決して高くありません。

断熱等級3であっても1992年(平成4年)の省エネ基準ですので、かなり古いものです。

一定以上の断熱性を求めるなら断熱等級4(2016年の省エネ基準)を満たすものが望ましいでしょう。

ただし、断熱等級が高くなるほど住宅価格が上昇しますので、その点は注意しなければなりません。

実物を見学する

質感や感覚のギャップを埋めるには実物を見るのが一番です。

実際のモデルハウス・オープンハウスの中に入ることで、間取りや設備、造作などを具体的に見ることができます。

特に間取りの感覚はとても重要ですので、しっかりと体感したほうがよいでしょう。

間取りの選択肢や設備のオプションを確認する

担当者との打ち合わせの段階で間取りの選択肢や設備のオプションを確認しておく必要があります。

ローコスト住宅は間取りが規格化されていることが多いですが、複数のプランから選択できたり、完全自由設計で間取りを決めたりできることがあります。

自分のライフスタイルや家族の部屋の使い方などを考え、自分たちの生活にあった間取りか確認しておいた方がよいでしょう。

アフターフォローやメンテナンス費用を確認する

先ほどの後悔した事例でもあったように、アフターフォローはローコストメーカーでかなり注意しなければならない部分です。

アフターフォローの内容や適用範囲、メンテナンスの費用についてあらかじめ確認しておきましょう。

その際、問い合わせ窓口やトラブルの対応時間、修理対応の段取りなども併せて確認するとよいでしょう。

複数業者を比較する

一つのメーカーとだけ商談を進めず、複数業者を比較することも重要です。

メーカーには得意不得意があり、コストに対する考え方やアフターフォローの内容もメーカーごとに異なります。

価格面だけではなく、提供できるサービスや設備、アフターフォローなど総合的に比較検討し、より自分の条件に合ったローコストメーカーを選びましょう。

まとめ

今回はローコストメーカーでよくある失敗と題して、ローコストメーカーのメリットやコストを安くできる理由、よくある失敗、失敗しないためのポイントをまとめました。

住宅は一生に一回の買い物であり、住宅購入費用はその後も長い間支払い続けるものであるため、価格を抑えたいという気持ちはとてもよくわかります。

しかし、価格面ばかりに注目して建てた後に後悔したり費用をより多く負担したりといった事態に陥ってしまえば元も子もありません。

安さだけに目を奪われず、メリット・デメリットを比較検討して最も自分の希望に合ったハウスメーカーを選択するべきではないでしょうか。

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