これから住宅を建てるときに考えておきたいのが、住宅用に使用する断熱材の選定です。
断熱材を使用することで外からの熱を遮断しやすくなり、室内の熱が外に逃げないようにできるのがポイントです。
しかし、住宅に使われる断熱材はさまざまな種類がある上に、それぞれさまざまなメリットやデメリットがあります。
どんな断熱材があるのか把握した上で、どの断熱材を選ぶのか決めることが大切です。
それでは、住宅用断熱材の種類や特徴、メリットやデメリットなどを解説します。
目次
住宅用断熱材の種類
住宅に使用される断熱材の種類は、以下の通りです。
・炭化コルク
・硬質ウレタンフォーム
・フェノールフォーム
・ポリスチレンフォーム
・グラスウール
・ロックウール
・セルロースファイバー
以上のようにさまざまな種類の断熱材が多くあるため、それぞれの特徴やメリット、デメリットについて知ることが大切です。
炭化コルクとは?
炭化コルクとは、ワインなどの栓に使われているコルクを炭化して作られた天然素材です。基本的にワインなどの栓に使われるコルクを製造する過程で余った部分を加工して炭化しているため、天然素材ながらもエコな素材として使われています。
それでは、炭化コルクのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
炭化コルクのメリット
炭化コルクのメリットは、断熱性能に優れていること、調湿性能が高いこと、防虫効果などが挙げられます。
炭化する前のコルクはスペースシャトルのエンジンノズルの断熱材にも使われるほどです。
一方の炭化コルクは1㎥あたり4000万個当たりの空気を内包しているため、微細な細胞によって優れた断熱性能を発揮します。
また、炭化コルクは吸湿性に優れているため、空気中の水分を吸収したり吐き出したりする性質があります。
炭化コルクによって壁体内結露の発生を抑えられるのも大きなポイントです。
炭化コルクのデメリット
炭化コルクのデメリットは、何と言ってもエコな素材であるにもかかわらず希少性が高く、材料費が高いので施工する範囲が広くなるほど施工価格も高くなることです。
硬質ウレタンフォームとは?
硬質ウレタンフォームとはポリウレタン樹脂を使用してできた断熱材のことで、正式にはポリウレタンフォームと呼びます。
硬質ウレタンフォームは独立気泡の構造になっており、気泡同士のつながりがないことから水分や空気を通しにくいので断熱性能や耐水性に優れているのが特徴です。
それでは、硬質ウレタンフォームのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
硬質ウレタンフォームのメリット
硬質ウレタンフォームのメリットは、独立気泡ならではの断熱性能の高さと、水や湿気に強いことです。
硬質ウレタンフォームの独立気泡は、気泡の中に熱伝導率が非常に小さいガスが閉じ込められているのがポイントです。
気泡同士がつながらないので、1つ1つの気泡が高い断熱性能を発揮してくれます。
また、独立気泡は熱伝導率が非常に小さいだけでなく、水や水蒸気が発生しにくい特徴を併せ持っています。
完全に水分を弾くわけではないので多少なりとも吸収しますが、元々水や湿気に強いことから大した影響を受けません。
すぐに乾燥して優れた断熱性能が維持されるため、湿気が強い場所に向いています。
硬質ウレタンフォームのデメリット
硬質ウレタンフォームのデメリットは、耐火性能やシロアリに対して弱い点です。硬質ウレタンフォームは可燃物なので断熱性には優れていますが、火に弱いので火事を引き起こしたりもらい火に遭ったりすると大きな被害をもたらす可能性が高いでしょう。
また、硬質ウレタンフォームはプラスチック系の断熱材なのでシロアリの被害に遭いやすいのもデメリットです。
シロアリは木材やプラスチックを食べる性質があるため、硬質ウレタンフォームを使用するときはシロアリ被害に注意しましょう。
フェノールフォームとは?
フェノールフォームとは、フェノール樹脂に硬化剤や発泡剤などを配合して板状に形成した断熱材です。
フェノールフォームは基本的に耐熱性や電気絶縁性などさまざまな特性を持っているため、安定して使い続けられるのがポイントです。
それでは、フェノールフォームのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
フェノールフォームのメリット
フェノールフォームのメリットは、断熱性能が高いこと、施工性が高いこと、長期的に安定した耐熱性であることが挙げられます。
断熱性能が高いのはもちろん、外断熱用の断熱材なので気密テープを貼っていくだけで高気密にしやすいのがポイントです。
フェノールフォームはボード状になっているため、断熱欠損しているところが目視で分かりやすく、スキマが出てきそうなところは気密テープでふさぐだけでいいので高気密高断熱住宅が実現できます。
また、フェノールフォームはプラスチック系の断熱材ですが、熱に強いのが特徴です。
本来プラスチック系の断熱材は熱に弱いですが、フェノールフォームの原料であるフェノール樹脂は熱に強い上に熱で硬くなる性質を持っています。
したがって、長期的に安定した断熱性能が維持できます。
フェノールフォームのデメリット
フェノールフォームのデメリットは、価格が高いこと、紫外線に弱いこと、衝撃に弱いことが挙げられます。
フェノールフォームは基本的に価格が高いので施工価格そのものが高額になるでしょう。
また、紫外線によって徐々に劣化していくので割れやすくなる他、衝撃にも弱いです。
厚み次第でさらに割れやすくなる上に、厚みを持たせるほど価格も高くなるので注意が必要です。
ポリスチレンフォームとは?
ポリスチレンフォームとは、ポリスチレン樹脂を発砲成形した断熱材です。ポリスチレンフォームはウレタンフォームと似ていますが、ポリスチレンフォームは主な原料としてスチロール樹脂を使用しているのに対し、ウレタンフォームはポリオールとポリイソシアネートを原料にして作られているのが違いです。
それでは、ポリスチレンフォームのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
ポリスチレンフォームのメリット
ポリスチレンフォームのメリットは、断熱性能が劣化しにくいこと、耐水性が高いことが挙げられます。
ポリスチレンフォームはプラスチック系の断熱材なので熱伝導率が低く、ビーズ法よりもプラスチックの粒が小さいため、断熱材が薄くても高い断熱性能が発揮されます。
さらに外気や湿気の影響も受けにくく、隙間も発生しにくいので外気や湿気の侵入による経年劣化も防げるのがポイントです。
また、独立気泡なので吸水性や透湿性が小さいため、断熱材が劣化しにくいです。
ポリスチレンフォームのデメリット
ポリスチレンフォームのデメリットは、耐火性能が低く、シロアリに対して弱いことです。
ポリスチレンフォームは可燃物なので断熱性には優れていますが、火に弱いので火事を引き起こしたりもらい火に遭ったりすると大きな被害をもたらす可能性が高いでしょう。
そのままでは火に弱いままなので、難燃剤などを加えて施工されるケースがほとんどです。
また、ポリスチレンフォームはプラスチック系の断熱材なのでシロアリの被害に遭いやすいのもデメリットです。
シロアリは木材やプラスチックを食べる性質があるため、ポリスチレンフォームを使用するときはシロアリ被害が起こらないように防蟻対策を行う必要性があるでしょう。
グラスウールとは?
グラスウールとは、無機質な繊維系断熱材の中で最も知られている断熱材の一つです。
主にガラスを原材料としており、高温で溶かしたガラスを遠心力などを利用して繊維状に加工して成形されます。
その形状がウール上に見えることから、グラスウールと名づけられました。
グラスウールの最大の特徴は基本的に資源ごみとしてリサイクルされたガラス材を使用しているため、再生利用によって環境に優しいエコな素材という点です。
住宅用断熱材として使用されている他、音楽ホールや高速道路、空調ダクト、給排水管の保湿・保冷剤として使われているなど、多種多様な場面で使用されています。
それでは、グラスウールのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
グラスウールのメリット
グラスウールのメリットは、リサイクルされたガラス材を使用しているため、コスパに優れていることが挙げられます。
コスパに優れている上に無機物なので化学変化にも強いのも大きなポイントです。化学変化が起きにくいグラスウールは経年劣化や腐食、薬剤や溶剤などに非常に強いため、耐久性が非常に高いです。
加工しやすいので施工箇所の形状に合わせた加工ができることから、幅広い用途で使用されています。
グラスウールのデメリット
グラスウールのデメリットは、湿気に弱いことと施工難易度が高いことが挙げられます。
グラスウールは基本的に吸水性能はありませんが、繊維同士の間に含まれる空気が一時的に水分を確保することがあります。
この場合、湿気が発生するだけで断熱性能が失われてしまうのです。
また、高い断熱性能を発揮するには優れた施工技術が必要不可欠です。
もしも施工が甘いと隙間が発生してしまうので、本来の断熱性能が発揮しにくくなります。
ロックウールとは?
ロックウールとは玄武岩や安山岩などの鉱物原料を高温で加工し、綿繊維状に成形して作られる断熱材のことです。
それでは、ロックウールのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
ロックウールのメリット
ロックウールのメリットは、断熱性能が高いこと、効果が長持ちすること、防音性や吸音性があることが挙げられます。
ロックウールの耐熱温度は600℃と非常に高く、高い耐火性も兼ね備えています。特にロックウールは微細な繊維の隙間に大量の空気を含むので暖気や冷気などを侵入させないようにするのがポイントです。
また、耐久性も耐水性も非常に高く、経年変化や劣化が少ないです。
内部結露も防げるので効果が長持ちしやすく、高い防音性や吸音性によって室内の音が外部に漏れにくくなります。
高い防音性や吸音性を実現しているのは、ロックウールの繊維に含まれている空気によるものです。
ロックウールのデメリット
ロックウールのデメリットは、価格が高いこと、湿度に弱いことです。
ロックウールと似たような性質を持つグラスウールがありますが、撥水性や耐水性などはロックウールの方が性能に優れているため、価格が高く設定されているのがデメリットです。
コスパで比較するならグラスウールの方が優位なので、価格と性能のどちらを優先するかで決める必要性があるでしょう。
また、ロックウールは湿気を吸い込むことで繊維の性質が変わってしまうため、断熱性能が失われてしまうので注意が必要です。
湿気が発生しないようにする工夫が必要になるでしょう。
セルロースファイバーとは?
セルロースファイバーとは、1950年代にアメリカで開発された天然の木質繊維でできた断熱材です。
巷では究極の断熱材とも言われており、原材料の80%がリサイクルされた新聞紙なので地球環境に非常に優しいエコな断熱材として広く使われているのが特徴です。
それでは、セルロースファイバーのメリットとデメリットについてご説明しましょう。
セルロースファイバーのメリット
セルロースファイバーのメリットは、断熱性能および調湿性能、防音性、防火性、防虫・防カビ性が高いことが挙げられます。
セルロースファイバーは木質繊維による熱伝導率の低く、隙間なくセルロースファイバーを敷き詰めるように施工するので高い断熱性能が長期間維持されます。
さらに調湿性にも優れているため、室内を適度な温度で保つことで内部結露やカビなどの湿気によるトラブルを防ぐことができます。防音性能も高く、多様な太さの繊維が複雑に絡み合って作られる気泡が高い防音性を生み出しているのがポイントです。
また、セルロースファイバーは性能過程でホウ素系の薬剤が配合されているのが特徴です。
ホウ素系薬剤に含まれるホウ酸の難焼性により、セルロースファイバーが炭化することで内部まで火が回るのを防いでくれます。
機密性も非常に高く、燃えにくい上に溶けず、住宅全体の温度が高くならず、万が一燃えるようなことがあっても自然素材なので有毒ガスも発生しません。
さらに、高い耐火性をもたらすホウ酸は、同様にシロアリによる被害やカビの発生を抑制する効果にも優れています。
総じて住宅をさまざまな面から守ってくれる上に快適な暮らしが実現できると言えるでしょう。
セルロースファイバーのデメリット
セルロースファイバーのデメリットは、価格が高いこと、施工日数がかかりやすいこと、壁内沈下や素材の落下が起こることが挙げられます。
セルロースファイバーは基本的に同じ密度の面積でも他の素材と比べて約3倍の密度の施工が必要になるため、必然的にかなりの量のセルロースファイバーが必要です。
量が多くなるほど価格も高くなるため、施工計画には十分に注意する必要性があるでしょう。
また、セルロースファイバーの施工には専用の機械とセルロースファイバーの扱いに慣れた専門の職人に施工してもらうため、より価格が高くなります。
さらに、セルロースファイバーの施工中は他の作業ができなくなるのでスケジュール調整をしなければなら、必然的に施工日数がかかりやすいのもデメリットです。
さらに問題なのは、かなりの量のセルロースファイバーを使用して施工するため、重量も増えていくことです。
施工密度が適正地に達していないと、セルロースファイバーの重みで壁内沈下が起きてしまい、断熱欠損が発生します。
したがって、セルロースファイバーの施工に慣れている業者や職人でないと壁内沈下による断熱欠損が起こる可能性が高いため、業者選びにも注意しなければなりません。
合わせて注意したいのが、壁内のシート貼りなどの処理が甘いと隙間が出てきてしまうので、セルロースファイバーが落下してくることがあります。
もちろん熟練の職人であれば落下しないようにしっかり処理してくれるため、安心できるでしょう。
住宅用断熱材を選ぶポイントとは?
住宅用断熱材を選ぶポイントは、業者と相談しながら自宅がある地域の気候や温度、湿度などの要素を含めた上で比較することです。
断熱材の種類によって断熱性能や耐火性、耐水性などに違いがありますし、特定の断熱材にしかない性能もあるので、それぞれの断熱材を比較して決めることが大切です。
ただ、建物の規模に応じて施工する範囲が広いほど価格も高くなるため、どのくらいの価格になるのかどうかも比較しましょう。
まとめ
住宅用断熱材にはさまざまな種類があるため、どんな断熱材を選べばいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。
断熱材によってさまざまなメリットやデメリット、性能の違いがあるので、業者と相談しながらどんな断熱材を選べばいいのか決めていくのがおすすめです。