建物は築年数が経過すると経年劣化によって何かしらの不都合が起こり、資産価値が下がります。
それを金額で換算しわかりやすくしたのが、住宅の耐用年数です。
木造住宅の構造によって耐用年数は異なり、低くなるほどに住宅の価値が下がってしまいます。
本記事では、木造住宅の耐用年数の仕組みを解説するとともに、長く住み続けるためのポイントを紹介します。
目次
住宅の耐用年数とは
耐用年数とは、住宅が品質を保ち資産価値を利用できることです。
木造住宅の場合には、物理的耐用年数・法定耐用年数など4つの耐用年数があり、材料の種類別に決まっています。
ここからは、住宅の耐用年数について解説します。
物理的耐用年数
住宅の品質を正常な状態でどれだけ維持できるかを示したのが物理的耐用年数です。
外壁は雨風や紫外線の影響で劣化していきますし、人が生活している空間も経年劣化が進むと歪みや隙間ができます。
定期的なメンテナンスで修繕を繰り返しても、100%建築当時の状態にはなりません。
満足な性能をどれだけの期間保てるのかを表しますが、メンテナンスだけでなく立地や天災被害の有無によって異なります。
築年数が経過しても、建築資材や施工・環境によっては耐用年数以上利用でき利用できる可能性があるということです。
木造住宅は築35年を超えると、売却したり賃貸にしたりするための修繕やリフォームが必要になります。
物理的耐用年数はそれ以上であっても、資産価値としては低くなることが予測できます。
建物として役割を果たす目安であり、物理的耐用年数が長いから資産価値が高くなるわけではありません。
法定耐用年数
固定資産である木造住宅の耐用年数は、土地や環境などによっておかれた状況が違います。
同じ築年数であっても、天災にあうことが少なく、雨風にさらされない環境であれば、少なからず建物の状態は良いはずです。
課税を公平にするためには、住宅の種類や構造などを細かく規定し、置かれた状況に合った年数を定める必要があります。
国によって建物の減価償却費用を算出するために決められた年数であり、木造住宅の耐用年数は22年と決められています。
実際には築50年でも生活していける建物もありますから、法的耐用年数が長いことが問題となることはありません。
経済的残存耐用年数
経済的残存耐用年数とは、木造住宅の価値がなくなるまで何年残っているかをあらわします。
あと何年建物に価値があるのか、需要のある年数ということです。
経済的残存耐用年数に築年数をプラスすれば、経済的耐用年数がわかります。
木造住宅は築年数だけでなく、家族の人数や利用状況、ペットの有無によって傷み具合も異なるわけです。
また、同じ工法で建てられた住宅であっても地域の風土や環境が違えば劣化スピードも異なります。
建物の価値の判定には、築年数よりも経済的な価値が何年あるか、経済的残存耐用年数が重要視されるということです。
期待耐用年数
維持管理を継続することで、木造住宅がどれくらいの期間利用可能なのかを示します。
木造住宅の期待耐用年数は22年で、どのような工法であっても同じです。
物理的耐用年数は60年ですから、中古住宅であっても修繕やリフォームがされていれば、長く住み続けることはできます。
購入した木造住宅にどれくらい住むことができるのか、期待耐用年数に資産価値があるかをはっきりさせることで購買意欲を高めます。
中古住宅の場合、修繕やリフォームによって資産価値を高めることができ、それを期待耐用年数に反映させられます。
住宅の評価が分かりやすく正当になったことで、不動産売却や購入がしやすくなりました。
物件種別における耐用年数
不動産物件や用途によって耐用年数は異なります。
その指針は国税庁で発表されており、どんな不動産であっても、それを元に決められています。
ここでは、物件種別の耐用年数について解説します。
木造戸建て
木造戸建ての耐用年数は、約20年〜22年です。
これは木造住宅の法定耐用年数が22年であることからきていますが、それ以降は住宅として利用価値がない・住めないというのは別です。
資産価値としてはゼロに近くはなりますが、定期的なメンテナンスやリフォームを行えば十分に生活ができますし、高額売却ができないこともありません。
木造戸建ての耐用年数は、普段の心がけ次第で伸ばすことはできます。
普段からこまめに掃除をして、不具合につながるような物を置いたり、傷めるようなことをしたりしないように心がけてください。
木造アパート
木造戸建てと同じで、木造アパートの耐用年数は約20年〜22年です。
きちんとしたメンテナンスが行われていれば、50年〜60年アパートを継続し利用すること
もできます。
個別の利用状況によっても傷み具合も異なるため、退去や入れ替わりのタイミングで設備を見直します。
そのタイミングで設備の見直しや修繕・リフォームを行えば、高額な費用をかけて手入れする必要はありません。
トラブルが起こる前に、メンテナンスや修繕をすれば住民からの不満もなく、長期的に利用してもらえます。
マンション
木造と異なり、鉄筋を使ったマンションは耐用年数が47年と長くなっています。
マンションの基礎に使われている、鉄筋コンクリートは頑丈で耐久性があるからです。
手厚いメンテナンスが施されたマンションは、不具合も少なく安心して住めるイメージがありますが、設備の劣化は免れません。
大きな地震が起こるたびに耐震基準が変更されるため、耐震改修を求められます。
マンションのメンテナンス作業は時間がかかるだけでなく、築年数が長くなれば莫大な費用がかかります。
耐用年数に係わらず、経済的な寿命として50年〜60年で取り壊されるのが実情です。
住宅構造別における家の寿命
耐用年数と家の寿命は違いますが、どれくらいの差があるのか、実際にいつまで住み続けられるのかを住宅構造別に家の寿命について考えてみました。
木造
木造の寿命は約30年と言われ、築50年以上経過した住宅は古民家扱いになります。
伝統構法があしらわれた木造住宅を「古民家」と指定していますが、不動産としては50年以上経てば古民家です。
古い住宅に、人が住んでいないわけではありません。
築35年以上の物件も売り出されていますし、築60年以上の木造で生活している人も意外と多いのです。
木造は大切にすれば、それこそ100年経過しても人が住めるだけの安全性を保てることから、寿命をはっきり決めることは難しいといえます。
木造の耐用年数は30年の理由
築30年になれば、家主は高齢となり子供達は巣立ち家族構成や環境に大きな変化があるはずです。
その間には、バリアフリーリフォームが行われ、二世帯住宅へ建て替えするケースも考えられます。
主に耐震基準が現在の耐震基準法に適合していない場合にも、建て替えを選択する場合があります。
リフォームにお金をかけるよりも、今よりも小さくシンプルな間取りの家に建て替えた方が安心して生活ができます。
30年前後で、建て替えや取り壊されるケースもあるため、耐用年数は30年とされているのです。
メンテナンスで耐用年数が長くなる
木造住宅の構造は年々進化しており、フラット35の基準程度で50年〜60年まで期待対応年数が伸びています。
これらから考えると、住宅の基礎が適切な状態であること、定期的なメンテナンスを行っていれば住宅の耐用年数を長くできます。
住宅メーカーでは、画期的な施工方法や資材を利用することによって木造住宅の保証期間を長く設けるようになりました。
木造の耐用性が短いといわれたのは過去の話です。
大切な住まいに長く住みたいと思う気持ちがあれば、こまめな掃除で異常を素早くキャッチし、メンテナンスを忘れずに行うことが大切でしょう。
鉄骨構造と鉄筋コンクリート
鉄骨構造の住宅は、鉄骨の厚みによって耐用年数が異なります。
軽量鉄骨プレハブ造と呼ばれる鉄骨の厚みが6mm未満の鉄骨構造の住宅は耐用年数が27年です。
賃貸アパートに使われるのが軽量鉄骨プレハブ造で、木造住宅よりも強度と耐震性が高く頑丈であるのが特徴的になります。
それ以上の厚みがあるものに関しては重量鉄骨造となり、マンションやビルなどに採用されています。
こちらは耐用年数が34年と長くなり、建築費用が高額なことや時間がかかることから住宅には不向きです。
アパートやマンションには共有部分があり、定期的なメンテナンスが行われています。
また、各部屋についても入居者の出入りに合わせて修繕していますので木造と比べると耐用年数が長いのです。
鉄筋コンクリートは強度が高い
鉄筋コンクリートは鉄骨造よりも壁が厚く、耐久性に優れています。
耐用年数が47年ですから、メンテナンス次第で80年くらいは十分に人が住める建物として存在するでしょう。
耐震性も高く作られていますから、古い賃貸でも鉄骨や木造よりは安全性と安定性が高いです。
鉄骨コンクリートのマンションでは、10年区切りで大規模な修繕工事で耐震性や防水・断熱効果を高めています。
木造だけでなく鉄骨や鉄筋コンクリートも定期的なメンテナンスを行うことで家の寿命を長くできます。
実際に家に住み続けられるかを見極めるポイント
木造住宅の寿命は30年程度、期待耐用年数は22年、物理的耐用年数は60年ですから、正しいお手入れやメンテナンスを行えば長く住むことができます。
木造住宅の何を見て判断すればいいのか、2つのポイントについて解説していきましょう。
安全に生活できるか
外壁や屋根などは見た目に修繕が必要であるとわかりますが、基礎部分については定期的な点検を行っていなければわかりません。
地震や大雨によって、外壁から水が浸水しカビが生えてしまうと、断熱材が劣化し効果が半減してしまいます。
目に見えない部分は不具合が出て気づくことが多く、劣化が進行していると修繕費が高額になってしまいます。
耐震性についても、今の基準にマッチしているのか、物理的耐用年数の範囲内であるかが重要です。
長く住みたいのであれば、安全に生活するためのメンテナンスは欠かせません。
定期的なメンテナンスを行い、大切な住宅を長持ちさせてください。
設備の耐用年数大丈夫か
建物のメンテナンスはもちろんですが、住宅内の設備についても見直しが必要です。
住んでいる家族も住宅と一緒に年を重ねていきますから、足腰が不自由になり、今まで通りのように動けなくなる可能性もあります。
トイレやバスルームをバリアフリーにする、キッチンを広く扉は開閉しやすい引き戸にリフォームするなど快適に生活できる環境作りが大切です。
また、照明やエアコンなど、電気設備の耐用年数は住宅よりも短いため、早めの見直しをしましょう。
設備をリフォームすれば、安全で快適な生活を続けることができます。
耐用年数にとらわれないで長く住み続けるためのポイント
耐用年数は快適な生活が送れるかの目安です。
現状維持はもちろん、長く住み続けるために何をしなければいけないかを考え行動しましょう。
ここでは、大切な住宅に長く住み続けるためのポイントを解説します。
定期的にメンテナンスやリフォームを行う
国内で有形文化財に指定されている建物は多く、そのほとんどが木造住宅です。
リノベーションによって住宅からカフェなどに生まれ変わるなど、耐用年数を超えた木造住宅も、定期的なメンテナンスやリフォームで長く住み続けられます。
築年数は経っていても、細かい不具合を早く見つけメンテナンスで住みやすい状態を保ちましょう。
水回りは定期的な掃除で、排水溝のつまりなどを予防できます。
キッチンやバスルーム、トイレもこまめに掃除をしながら、使いにくくなっていないのかなどをチェックしていきます。
日頃から気にかけておけば、一度に大がかりなリフォームをせずに住宅を長持ちさせられます。
生活するうえで優先すべき箇所からリフォームに取り掛かれば、快適性を損なわず住み続けられるでしょう。
専門家に家の点検をお願いする
新築住宅は、ハウスメーカーや工務店が1年・2年・3年と保証期間中は点検が行われます。
最初の数年は初期不良を見つけて修繕するために行いますが、5年以降の点検は老朽化による不具合を見つけるためのものです。
築年数が長くなれば、基礎や防水・断熱面に問題が起こりやすく、早めの修繕が必要になるでしょう。
このような不具合は外見上からは見つけにくいため、住宅の専門家に依頼し定期的な点検が必要です。
外壁や屋根など見ただけでは異常が分かりにくく、見逃しやすい場所でもあります。
専門家に依頼すると高額な料金が発生するため、小さな不具合はDIYで修繕する方もいるでしょう。
その小さな損傷の影には、大きな不具合が隠れているかもしれません。
点検を怠ったことによって地震で倒壊してしまった、崩落したなどを防ぐためにも、定期的な検査を専門家に依頼してください。
まとめ
住宅の耐用年数は住宅の価値を判断するための築年数で、家の寿命とは違います。
売却などを考えず、長く木造住宅で生活するためには定期的にメンテナンスやリフォームを行ってください。
家の中はもちろんですが、外壁周りをこまめに掃除することで早期に不具合を発見できます。
小さな不具合を見逃さない、専門家に依頼して家の点検を行い、定期的なメンテナンスを繰り返すことで耐用年数は引き延ばせませんが住宅の寿命を伸ばせます。