省エネ住宅の条件とは?基準や種類についても紹介

2050年カーボンニュートラルを目指し、国内では「エネルギー基本計画」が進められています。

その一環として省エネ住宅の普及がありますが、基準がよくわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、省エネ住宅の条件や基準、どのような種類があるかなどについてまとめました。

省エネ住宅に活用できる、補助金や優遇制度などについても、ご紹介しています。

 

省エネ住宅とは

 

省エネ住宅とは、生活エネルギーの消費を抑えるために、建築資材や設備を導入した家屋です。

日本は、冬は寒く夏は暑い、梅雨はじめじめと、季節により室内環境や温度変化が激しく変化します。

従来の住宅では、冬は暖房の空気が逃げやすく、夏は外気熱が室内に侵入するため1年を通じて冷暖房エネルギーが消費されています。

省エネ住宅は、断熱性や気密性が高いだけでなく、防露や換気性能にも優れているのが特長です。

エネルギー消費を抑えながらも、寒暖差を感じることもなく、常に過しやすい空間作りができるのが省エネ住宅です。

 

省エネ住宅の性能

省エネ住宅において、断熱、日射遮蔽、気密の機能が重要視され、これらの性能が働くことで、エネルギーの消費を抑えられます。

ここでは3つの視点から省エネの対策の柱を紹介します。

 

断熱

 

暖めた部屋の空気を逃さないためには、断熱の力が必要です。

断熱性を高めることにより、暖房器具で温まった空気は家の中を循環し冷えることがありません。

夏には室外の熱を家のなかに持ち込まないため、適温に調節された部屋で快適に過せるようになります。

断熱性能が低いと、冬は暖房温度を上げ夏は冷房の温度を下げなければ快適になりません。

エネルギーを多く使えば、CO2が多く排出され地球環境温暖化を加速させます。

いかに少ないエネルギーで、快適に過ごせるかが省エネにつながります。

 

日射遮蔽

 

太陽の光から住宅を守る、紫外線対策が日射遮断です。

近年は夏以外の日照期間が長くなり、春から夏にかけては特に暑く感じるようになりました。

断熱性能はあっても日射遮蔽性が低いと、外壁に蓄積された熱が家のなかに入ってきてしまい、冷房を使っても部屋が涼しくなりません。

太陽光の遮断は、室内ブラインドが一般的ですが、室外で遮蔽したほうが効果はあります。

外壁に沿わせ落葉樹を植える・屋外設置型ブラインドの設置が有効的です。

日射遮蔽性能を高くすると、室内温度の上昇が抑えられるため、エネルギーを抑えて冷房を使用できます。

 

気密

 

築年数が経った家は歪みから隙間が生まれ、それを通じて空気が出入りすると、熱が室内外を移動します。

空気の移動を少なくすれば、冷暖房の空気が効率よく動かせます。

そのためには、部材の隙間をできるだけ少なくし気密性の高い住宅にしなければなりません。

気密がしっかりしていなければ、断熱効果も薄れてしまい、快適な温度で過ごせなくなります。

それだけでなく、光熱費が抑えられ適度な換気コントロールができるため、室内の空気を清潔に保てます。

 

省エネ住宅の基準

 

住宅の省エネルギー基準を誘導する基準として、「低炭素建築物の認定基準」・「住宅トップランナー基準」が設定されています。

ここでは、この2つの基準について解説します。

 

住宅の省エネルギー基準

 

住宅の省エネ基準とは、建築物省エネ法で定められている、建築物エネルギー消費性能基準のことです。

気候に応じて日本国内を8つの地域に分け、住宅全体で使用するエネルギー量の基準値を示しています。

・ZEH住宅

・LCCM住宅

・認定長期優良住宅

・認定低炭素住宅

・性能向上認定住宅

・スマートハウス

将来的には、新築住宅すべてに上記の省エネ基準が標準化される予定です。

 

低炭素建築物の認定基準

 

平成24年12月に認定低炭素住宅(エコまち法)が施行されました。

国内の低炭素化・エネルギー利用の合理化促進を目的とした法律です。

エコまち法に基づいた低炭素建築物認定制度により、低炭素建築物として認定されると、所得税軽減などが受けられます。

決められた条件を満たせば、低炭素建築物として認定されます。

その条件は以下の3つです。

・一次エネルギー消費量に対し、一定の比率以上の削減がなされている

・低炭素化に資する措置を採用している

・CO2の排出量が標準的住宅よりも一定以上削減されている

 

住宅トップランナー基準

 

COP3で採択された京都議定書の内容に対し、製造業などで使用する機器の消費エネルギー努力義務を定めたのがトップランナー制度です。

トップランナー基準は、トップランナー制度の1つで、一次エネルギーの消費を抑えるための基準を指しています。

一次エネルギーとは、生活に必要な電気やガスを作るために使用される、自然由来のエネルギーのことです。

これは、分譲・注文戸建住宅や賃貸を供給する業者を対象とした基準で、各トップランナー基準を定め、省エネ性能向上を誘導します。

トップランナー基準を満たしている住宅は、省エネに優れているとみなされ「トップランナー」に認定されます。

 

省エネ住宅の評価

 

省エネ住宅は、国で定められた「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」をもとに評価がおこなわれます。

ここでは、この2つの評価について詳しく説明します。

 

外皮基準

 

外皮基準とは家全体を覆う外の部分のことで、具体的には、屋根・外壁・窓・床や床下などを指します。

以前は次世代省エネルギー基準として、全国を6つの地域に分け、熱損失係数=Q値と夏期日射取得係数=μ値を設定していました。

断熱性能だけを切り取った基準だったため、高性能な設備を使っても基準値をクリアできませんでした。

法改正にともない、全国を6つから8つに区分し省エネ基準を設けています。

外皮性能の高さを、断熱性能と日射遮蔽性能に区分けし、評価します。

省エネ性能が高いほど、この数値は低くなるのが特徴です。

地域区分 1・2 3 4 5・ 6 7 8
基準UA値 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
基準ηAC値 3.0 2.8 2.7 3.2

1、2:北海道

3:青森・岩手・秋田

4:宮城・山形・福島・栃木・新潟・長野

5、6:茨木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川

富山・石川・福井・山梨・岐阜・静岡

愛知・三重・静岡・滋賀・京都・大坂・兵庫

奈良・和歌山・鳥取・島根・和歌山・広島

山口・徳島・香川・愛媛・高知・福岡

佐賀・長崎・熊本・大分

7:宮崎・鹿児島

8:沖縄

 

一次エネルギー消費量基準

 

石油や天然ガス・原子力に太陽光など、自然から採取できるものが一次エネルギーです。

生活のなかで欠かせない、冷暖房や換気・照明・給湯の4つを対象とした基準で、エネルギーの削減率を評価します。

消費量は、「BEI」の指標で判断します。

BEIは「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で求められ、エネルギー消費量が少ないと、等級があがるのが特徴です。

国が定める省エネ住宅の基準は、一次エネルギー消費量等級4以上となっています。

等級 BEI
4等級 1.0以下
5等級 0.9以下
6等級 0.8以下

国が定める省エネ住宅の基準は、一次エネルギー消費量等級4以上(BEI1.0以下)での適合が求められます。

 

省エネ住宅の種類

 

省エネ住宅にはいくつかの種類があり、環境に配慮しながら快適に暮らすためのマイホームとして注目されています。

ここでは、省エネ住宅5つの種類について紹介します。

 

ZEH住宅

 

ZEH住宅(ゼッチ)とは、一次エネルギーの消費量と創るエネルギー量をプラスマイナスゼロ以下にする住宅です。

具体的には、断熱性能を高めるために断熱材や窓の性能を見なおし、冷暖房に使うエネルギーを減らします。

消費エネルギーを減らすために、省エネタイプのエアコンや消費電力の少ないLED照明などを導入し、太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムが必要になります。

再生可能エネルギーシステムによりつくりだすエネルギーは、消費するエネルギーを上回ることが条件です。

住宅に必要な光熱費が抑えられるだけでなく、快適な住み心地を可能にするのがZEH住宅の特徴といえます。

 

LCCM住宅

 

再生可能エネルギーの活用した設計と設備によって、建設から廃棄までのCO2排出量を、最小限に抑えることを条件とした住宅です。

低水準であった国内の木材自給率は回復傾向にありますが、半数近くは輸入材に頼っています。

トラックや船を使って木材を搬入すると、国内から運ぶよりもCO2の排出量が増えることになります。

LCCM住宅に使用される資材は、すべて国内から運搬されるためCO2排出の削減が可能です。

ライフサイクルに着目し、資材から運搬、建築までトータル的にCO2の収支マイナスを目指している高基準の住宅といえるでしょう。

 

長期優良住宅

 

長期優良住宅は、国土交通省が定めた基準や審査をクリアし、安全に長期間居住生活が送れると認定された家のことです。

選定た審査基準として以下のものがあり、これらをクリアした住宅は住宅ローンの金利優遇や固定資産税の減税期間が延長などのメリットを得られます。

・耐震等級2以上または免震建築物であり、損傷レベルの低減が図れる

・次世代省エネルギー基準に適合する性能などを確保している(省エネルギー対策等級4以上)

・居住環境の維持や向上に配慮されている

・定期的な点検や補修計画が策定されている

・耐用年数が長い設備で住宅の維持管理がされている

・劣化対策としての構造躯体を使用している

・住戸面積は75m2以上(一戸建て)、フロアの床面積が40m2以上

 

認定低炭素住宅

 

CO2排出を抑える対策が取られている住宅のことで、認定されると優遇措置が受けられるメリットがあります。

低炭素住宅に認定されるためには、3つの基準をすべて満たすことが条件です。

・省エネルギー性能を備えており、低炭素化促進対策が取られている

・低炭素化促進の基本方針に合っている

・資金計画が適切である

低炭素化促進対策として、省エネ基準の断熱性と日射遮蔽性があり、一次エネルギー消費量を10%以上削減(5等級レベル)されている必要があります。

節水対策や再生可能エネルギーの利用、ヒートアイランド対策、低炭素対策がされていることが条件です。

 

スマートハウス

 

従来は「太陽光発電システム」「蓄電池」「HEMS」が備わった最新住宅を指していましたが、近年ではITを使って暮らしを便利にする住宅を指しています。

スマートフォンを使って浴槽にお湯を張ったり、エアコンを入れたりと情報技術を使ってエネルギー消費量のコントロールが可能です。

情報技術が家庭内のエネルギー消費量を最適にする、最新式の住宅の形といえるでしょう。

 

省エネ住宅における補助金や給付金

 

省エネ住宅推進のために、補助金や給付金などの資金的支援が手厚くなっています。

種類も多いため、どのような補助制度が利用できるのか確認しましょう。

 

ZEH支援事業

 

ZEH支援事業とは、ZEH基準を満たす省エネに優れた住宅に対して支給される補助金制度です。

公募期間が決められており、原則として受付は申し込み順、着工は交付決定通知後となります。

交付の申し込みは、施主・建築業者、ZEHビルダーがおこなえますが、予算に達すると

公募終了となるため注意しましょう。

補助金交付を受けられるのは、新築の注文住宅および新築の建売戸建ての購入予定者のみです。

中古住宅や、リフォームは対象外になるケースが多いため、公募内容をしっかり確認しましょう。

交付対象者であっても、以下の条件を満たす住宅でなければ補助金は受けられません。

・申請者が常時居住している

・専用住宅である

・賃貸や・集合住宅ではない

・住宅の敷地が「土砂災害特別警戒区域」にかかっていない

・建売住宅は交付決定日後に支払いや引き渡しをする

・「ZEH」または「ZEH+」の要件を満たす住宅である

補助額(一戸あたり)
ZEH 定額55万円
ZEH+と次世代ZEH+ 定額100万円
LCCM住宅 140万円まで

こどもみらい住宅支援事業

 

子育て世代の住居費支援と脱炭素化の強力な推進を目的としているのが、こどもみらい住宅支援事業です。

省エネ性能を持つ新築住宅の建築や、購入および省エネリフォーム費用に対して補助金が支払われます。

対象者は子育て世帯または若者夫婦世帯で、こどもみらい住宅事業者との契約が条件です。

補助金は省エネの性能や工事内容によって変動し、新築住宅の場合には省エネ性能に応じて60万円〜100万円、リフォームは5万円〜最大60万円になります。

対象となる住宅には6つの条件があり、すべてを満たしていないと補助金が受け取れません。

・所有者が居住する住宅である

・土砂災害特別警戒区域外に立地する

・未完成または完成から1年以内で人の居住用

・住戸の床面積が50㎡以上

・ZEH住宅および高い省エネ性能等を有する住宅、一定の省エネ性能を有する住宅に該当(書面で確認)

・交付申請時、一定以上の工事完了が確認できる

補助金額は、「ZEH住宅」100万円、「高い省エネ性能等を有する住宅」80万円、「一定の省エネ性能を有する住宅」60万円となります。

 

既存住宅における断熱リフォーム支援事業

 

断熱リフォーム費用の一部が補助される制度でトータル断熱と居間だけ断熱の2種類にわかれ、併用はできません。

トータル断熱の場合には、15%以上の省エネ効果が見込まれることが条件です。

居間だけ断熱は、窓だけや床だけも補助金支給の対象となります。

支給条件として、以下の4点に注意しましょう。

・既存住宅のリフォーム工事

・使用製品は指定品の中から選ぶ

・居住専用であること、住宅であること

・着工は交付決定後におこなう

リフォーム箇所 補助金の上限額
建物の断熱改修 戸建120万円、集合住宅15万円
省エネ設備の導入 1機器につき5万円~20万円
照明のLED化 1箇所あたり8,000円

長期優良住宅化リフォーム推進事業

 

リフォームで家の性能をアップさせ、長期優良住宅の認定が取得できると、税制や金融制度などの優遇を受けられます。

住宅性能表示において一定の基準をクリアすると、長期優良住宅として国に認定されます。

項目 基準
耐震等級 等級2以上
断熱等性能等級 等級4(最高等級)
劣化対策等級 等級3(最高等級)
維持保全対策等級 等級3(最高等級)

新築の長期優良住宅の補助金は、地域材の使用により最大120万円給付されます。

申請書類や実績報告書類等の事務処理が必要になるため、建築会社に依頼するなどして提出しましょう。

長期優良住宅リフォーム補助金の上限は以下をご覧ください。

リフォーム種類 補助金額
評価基準型 100万円まで
認定長期優良住宅型 200万円まで
高度省エネルギー型 250万円まで
提案型 100万円(長期優良住宅認定を取得なら200万円)まで

省エネ住宅における減税等優待制度

 

省エネ住宅にすると、国からの補助金を受けられますが、それ以外にも住宅ローンの金利や所得税の控除などを受けられます。

どのような優遇が得られるのかを詳しく紹介します。

 

金利

 

新築・中古問わず、フラット35Sでは省エネ住宅を購入した方を対象に、住宅ローンの一定期間金利引き下げをおこなわれます。

省エネ性能4以上や耐震等級2以上、高齢者配慮等級2以上の住宅などが対象です。

フラット35Sの金利引き上げ期間は当初5年間プランと、10年間プラン「フラット35S」(ZEH)も新設されています。

 

減税

 

省エネ住宅購入およびリフォーム費用のために住宅ローンを組んだ場合、所得税の控除が受けられます。

自己資金でおこなった場合も、投資型減税の対象となります。

住宅購入者には、不動産取得税の控除や登録免許税の引き下げ措置がありますし、リフォームすると固定資産税が減額されます。

確定申告では証明書の添付が必要になるため、事前に用意しておくことをおすすめします。

 

まとめ

 

家庭で使うエネルギー消費量を抑えるための補助金や、給付金が充実している今だからこそ、省エネ住宅実現のために利用を検討しましょう。

設備や建築資材を導入すると、快適性が高まるだけでなく、環境への負担を減らせます。

省エネ住宅は住宅ローンの金利や所得税などにも有利に働きます。

さまざまな種類があるため、自分の住みやすいスタイルを選ぶとよいでしょう。

 

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